カテゴリ
三冬のシャープ・サイト
以前の記事
2009年 06月 2009年 04月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
1811年3月、バルロッサの戦い。
第3部 戦闘 第12章 - 1 サー・トーマス・グレアムは、自分を責めていました。 もし英軍3大隊をセッロ・デル・プエルコの頂上に配置していれば、フランス軍に陥落されることはなかったでしょう。 今やすでにそこは陥ち、ディルクスの部下たちがサー・トーマスの過ちを修正してくれるまでの間、松林に沿った長い防衛線をホイートリー大佐が持ちこたえてくれることを信じるよりほかありませんでした。 もしここを失えば、そしてもしフランス師団が丘を下って北側に布陣したら、それはホイートリーの後衛を突くことになり、大虐殺の場となることでしょう。 フランス軍を、丘から一掃しなければなりませんでした。 ルファン将軍は丘の尾根に4大隊を配備しており、榴弾兵のスペシャリストたちも2大隊保持していました。 彼らは今では榴弾を装備してはいませんでしたが、その代わり、彼らは歩兵部隊の中でも屈強の大男たちで、野蛮な闘い方をすることで知られていました。 ヴィクトール元帥は、サー・トーマス・グレアムと同じくらいにその丘が勝利のための鍵になっていることを知っていて、ルファン将軍のところまで馬を寄せてきました。頂上からは、廃墟になった礼拝堂の傍らに、ラヴァルの分隊が松林に向けてじりじり血前進していくのを、ヴィクトールは見ることが出来ました。 よろしい、と、彼は思いました。 彼らに独力で戦わせ、ルファンの兵士たちを援軍として率いていこう。 海岸はほとんど空白地帯でした。 スペイン歩兵部隊は村からさほど遠くないところで休息をとっており、どういうわけか、彼らは他のスペイン軍が、望遠鏡で見る限りではその視野に入らないほど遠く北側に離れた場所に居るというのに、戦いには参加しようとしていませんでした。 ルファンの前方の4大隊のラインは、ちょうど2000あまりの兵士たちで構成されていました。 荒野にいるフランス兵たち同様、彼らは分隊ごとに区分され、彼らの眼下には何百ものブラウンの大隊の兵士たちの死体が広がっていました。 その死体を乗り越え、英軍兵士たちは明らかにセッロ・デル・プエルコを再び手中にしようとしてやってこようとしていました。 「連中は1500ほどか?」 と、ヴィクトールは新参者たちを数えて言いました。 「そのようです」 と、ルファンは言いました。彼は6フィートあまりの大男でした。 「英軍近衛隊のようだな」 と、ヴィクトールは言いました。彼は望遠鏡でディルクスの旅団を見つめていました。そして先頭の第1近衛歩兵連隊の青い連隊旗がはっきりと見えていました。 「最高の舞台を犠牲にするわけだ」 と元帥は嬉しげに言い足しました。 「それならば生贄にしてやろうではないか。連中を一掃しよう!」 その連中は丘を登り始めました。 彼らは1400人の、おもに近衛兵たちでしたが、第67歩兵連隊の半数が右翼に、そしてハンプシャー部隊の向こう側の海に近いほうには、ライフルマンたちの2中隊が配置されていました。 彼らはゆっくりと近づいてきました。 丘のふもとに達するのに、1マイルで済むところを2倍もの距離を進まねばならないものたちもいて、夜通し眠らずに歩いた彼らは疲れきっていました。 彼らは頂上までの道筋を、ブラウン少佐の取ったルートはたどらず、より傾斜が急でフランス軍の砲撃が不可能な、少なくとも低いところにいるうちは砲撃しづらい海に近い斜面を登っていました。彼らは1列になり、しかし丘に差し掛かると木立や足場の悪い地面で列が乱れ、英軍兵士たちはばらばらになって無秩序に散在しながら北西4分の1の斜面を這い上がっていきました。 ヴィクトール元帥は、副官の水筒からワインを1杯受け取りました。 「頂上あたりまで来させよう」 と、彼はルファンに指示しました。 「そうすれば、大砲がやつらを粉々に出来る。榴弾砲を食らわせてやれ。それから突撃だ」 ルファンはうなずきました。彼が計画していたことと同じだったのです。 丘は急斜面で、英軍は4分の3も登れば、すっかり息を切らしているはずでした。そうすれば、あとは大砲とマスケットで片をつければいいのです。 砲撃で隊列に穴を開け、その後歩兵4大隊を解き放って銃剣を持って丘を下っていけばいいのです。 英軍は一掃されるはずでした。そして潰走する彼らが丘のふもとに達する頃には混乱を極めていると考えられました。そこへ歩兵と竜騎兵を投入して海岸へと松林を抜けて狩り立てて行けばいいのです。榴弾兵は、と、彼は思いました。そのあとで他の英軍旅団が南に現れたときに投入すればよい。 レッドコートたちは上へ上へとよじ登っていました。軍曹たちは隊列を何とかまっすぐに維持しようと努めていましたが、その足場の悪さでは無理な相談でした。 フランスの前哨兵たちは幅を狭めて下ってきており、攻撃兵たちに射撃を浴びせました。 「撃ち返すな!」 と、サー・トーマスは叫びました。 「弾を無駄遣いするな!頂上に着いたら一斉射撃だ!まだ撃つなよ!」 フランス突撃隊の銃弾がサー・トーマスの帽子をかすめ、白髪には触れることなく帽子を持っていってしまいました。彼は馬腹を蹴りました。 「勇士たちよ!」 と、彼は怒鳴りました。 「登って行くぞ!」 彼は、お気に入りのスコッツメンたちである第3近衛歩兵部隊の最後尾の馬上にありました。 「ここはわれわれの場所だぞ、諸君!邪魔者どもを追い払おうではないか!」 ブラウン少佐の部下たちのうちの生き残りはまだ丘の上にいて、その上に向けて射撃を続けていました。 「近衛隊とみんなが来たぞ!」 と、ブラウンは叫びました。 「諸君全員生き延びるほうに、私は賭けるぞ!」 彼は将校の3分の2と兵士の半数以上を失っていました。しかし彼は生存者たちに、集合して近衛歩兵連隊に合流するようにと叫びました。 「やつらは馬鹿だ」 とヴィクトール元帥は、軽蔑というよりは困惑した様子で言いました。 1500の兵士が、3000の兵と砲兵隊で固められた200フィートの丘を奪取することを望んでいると? とはいえ、敵方の馬鹿さ加減は、味方の好機でした。 「砲撃の直後に一斉射撃だ」 と、彼はルファンに言いました。 「そのあとで銃剣でやつらを下に追い払え」 彼は拍車をかけて砲兵部隊の前を横切りました。 「ピストルの射程半分にまで彼らが接近するまで待て」 彼は砲兵指揮官に伝えました。その距離なら、はずしようがないのです。虐殺になるはずでした。 「何を装填した?」 「榴弾です」 「よろしい」 と、ヴィクトールは言いました。彼は先頭の近衛歩兵連隊の豪華な連隊旗を見つめていました。そして、その2本の旗がパリでのパレードで披露されることを想像しました。 皇帝はお喜びだろう!英国王自身の近衛隊の旗を手に入れれば! 皇帝はその旗をテーブルクロスにお使いになるだろう、と彼は考えました。もしかしたらオーストリアからの新しい花嫁との新床のシーツに使うかもしれない。 彼は声を上げて笑いました。 英軍兵の隊列が近づいてきたために、前哨兵たちは坂の上のほうに這い上がっていました。 もっと近く、と、ヴィクトールは思いました。彼は敵兵をほとんど丘の頂上にまで引き寄せ、ちょうどそれは6門の大砲の前面になっていたのです。 彼はラヴァルの兵士たちのいる北側に目を向け、そして彼らが松林の間際にまで詰めていっているのを確認しました。 1時間半以内に、このちっぽけな英国軍は残骸と化すだろう、と彼は思いました。そしてさらにもう1時間もあれば、歩兵部隊を再編成して海岸の向こう側にいるスペイン軍を襲撃することが出来るだろう。 パリに何本の旗を送ることが出来るだろうか?1ダース?20本?皇帝のベッドを飾るには十分だろう。 「よろしいですか?」 と、砲兵指揮官が尋ねました。 「まだ待て」 とヴィクトールは言い、勝利を確信していましたが、榴弾歩兵部隊2大隊に向かって待機するように手を振って合図しました。 「前進!」 と彼はルッソウ将軍に向かって叫びました。 歩兵を待機させている余裕は、もはやありませんでした。 3000の全兵力を、その半分の敵に向けて投入するときでした。 彼は副官のひじをつつきました。 「楽隊にラ・マルセイエーズを聞きたいといってくれ!」 彼はにやりとしました。 皇帝は「ラ・マルセイエーズ」が革命的心性が強すぎるといって好みませんでしたが、ヴィクトールはこの歌が人気があり、兵士たちを敵兵の虐殺へと駆り立てることを知っていました。 彼は自分で歌いだしました。 「ラ・ジュール・デ・グロワ・エ・アリヴ(栄光の日はやってきた)」 と彼は歌い、声を上げた笑ったので、砲兵指揮官は驚いて彼を見つめました。 「さあ!」 と、ヴィクトールは言いました。 「今だ!」 「撃て!」 大砲が火を噴き、海岸も海も、遠くの白い街も煙で覆われて見えなくなりました。 「撃て!」 ルファンが彼の大隊指揮官たちに叫びました。 マスケットの銃身が反動でフランス兵たちの肩をたたきました。 さらに濃い煙が空を覆いました。 「銃剣装着!」 元帥は叫び、白い羽毛で飾られた帽子を砲撃の煙に向けて打ち振りました。 「前進!勇者たちよ!進め!」 楽隊は演奏し、太鼓手はビートを打ち鳴らし、そしてフランス軍は仕事を終わらせるために進んでいきました。 栄光の日はやってきたのでした。
by richard_sharpe
| 2009-02-04 17:09
| Sharpe's Fury
|
ファン申請 |
||