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1811年3月、バルロッサの戦い。
第2部 カディス 第7章 - 3 男はマスケットを持ち上げかけましたがシャープの顔を見てしまい、おろしました。手が震えていました。 「みんな、降りてきていいぞ」 と、シャープは上階に声をかけました。 ここまでは簡単でした。簡単すぎないか?1500ギニーという金は、モンセニー神父にとっても気配りを失わせるほどのものだったのでしょう。 二人の男は武器を取り上げられ、さらにハーパーが、二人の印刷工が納戸で寝ていたのを引きずり出し、部屋の隅に見張りをつけて座らせました。その間、さらに小さな部屋からヒゲもじゃのみすぼらしい男が(それがライターでしたが)引っ張り出されました。 「ハリス、この哀れっぽいやつに2分で手紙をよこさなければ命はないといえ」 と、シャープは言いました。 ライターのベニート・シャベスはハリスに銃剣を喉に突きつけられてわめきたてました。ハリスは彼を壁に押し付け、シャープが部屋を調べている間にあれこれ質問していました。 通りに面したドアは廃材で閉ざされていましたが、中庭に向かった扉は鉄の大きな錠がかけられているだけでした。 逃げ道はある。 「軍曹!1階の紙を投げ下ろせ。スラッタリー!新聞を1部だけとっておけ。残りはばら撒け。それから砲弾をよこせ」 シャープは印刷台の上に砲弾をおき、プレスで挟み込みました。 ハーパーとハーグマンは床に紙を放り投げており、シャープは導線に火がつきやすいように紙の山を砲弾の間に作りました。 「ヌニエズをここによこすようにパーキンスに言え」 と、シャープは言いました。 ヌニェズが降りてきて、シャープが何をたくらんでいるかを悟ると、くどくどと何か言い始めました。 「うるさいといってやれ」 と、シャープはハーパーに言いました。 「手紙です」 と、ハリスが紙の束を差し出し、シャープはポケットに滑り込ませました。 「まだ他にもあると言っています」 「まだある?出させろ!」 「そうじゃなくて、女がまだ持っているはずだと言っているんです」 ハリスはタバコに火をつけようとしていたシャベスの親指をねじりました。 「それから、酒を飲ませろと言っています」 テーブルの上にはトランプと一緒に半分残ったブランデーの壜がありました。シャープがそれをシャベスに渡すと、彼はヤケクソのようにあおりました。 ハーグマンはブランデーとオイルを混ぜたものを床を覆った紙の上に振りまいていました。煙玉をドアの後ろに置くと、火が放たれる準備ができました。 火は家全体に回るはずだ、とシャープは考えていました。活字も何もかも溶けるだろう。そして印刷機を砲弾が壊し、炎は階段を舐めて上っていくだろう。 石組みの壁は炎をさえぎり、ひとたび天井が落ちれば大雨が火を消してくれるはずでした。 シャープは手紙を奪い取ることだけを計画していましたが、しかしコピーがあるのではないかと思い、印刷機はいくらでも嘘を吐き出し続けることができるので、焼き払うに越したことはないと考えたのでした。 「連中を外に放り出せ」 と、シャープは捕虜を示しながらハーパーに言いました。 「外にですか?」 「全員だ。中庭に出せ。蹴りだすんだ。それから鍵をかけなおしておけ」 捕虜たちはドアから押し出され、鍵が閉められました。シャープは部下たちを上階に上げました。 シャープは階段に足をかけ、ろうそくの日を手近な紙に近づけました。ほんの数秒で、炎は低く広がり、ブランデーとオイルのしみこんだ紙に達すると、驚くほどの勢いで燃え出しました。 シャープは煙に追い立てられるようにして、階段を上がりました。 「引き上げ戸から屋根の上に出ろ」 と、彼は部下たちに命じました。 シャープが最後に出ました。煙は寝室にまで昇ってきていました。煙玉に火がついたことがわかりました。そして砲弾の最初の一発が爆発し、家中が揺れました。続いてシャープを追い越すように煙が吹き上げ、残りの砲弾にも火がついたことがわかりました。 これが 「エル・コレオ・デ・カディス」 の最後だ。 シャープは引き上げ戸をぴしゃりとおろし、ハーグマンに続いて屋根の上から教会の廃墟に飛び移りました。 「みんな、よくやった」 礼拝堂に降りると、シャープは言いました。 「あとは帰るだけだ。大使館に戻る」 教会の鐘は鳴り響き、人々が火事に驚いて集まり始めていました。 通りは混乱に陥っており、そして混乱は好都合でした。シャープたちは、かえって人目につかずに済むのです。 「銃は隠しておけ」 と言って、シャープは先頭に立って中庭に抜けました。頭がずきずき痛み、雨にずぶぬれでした。しかし彼は心底ほっとしていました。 任務は終わった。 手紙を取り返し、印刷機を壊し、あと残った問題は女の謙だけだ、と彼は思いました。しかしもう難問は解決済みだ。 シャープは大きなかんぬきを動かし、ドアを引きました。ほんの1インチ開ければ、外の様子がわかるはずでした。 しかしドアは内側に強く押し開けられ、シャープはハーパーの傍らに飛びのきました。 男たちが門に集まっていました。 兵士たちでした。 通りの住人たちがかざすランプの火で、その男たちの空色のユニフォームと白いクロスベルトが見えました。そして6本の銃剣が鈍い光を放ち、7番目の兵士がランタンを持って現れ、その背後には将校がいました。濃いブルーのジャケットに黄色いサッシュを腰に巻いていました。 将校はシャープにわからない命令を下しましたが、それでもその銃剣の意味は十分にわかりました。 シャープは後ずさりしました。 「銃を出すなよ」 と、彼は部下たちに命じました。 スペイン人将校はなにやらシャープに問いかけましたが、早すぎて聞き取れませんでした。 「なるようにしかならんな」 と、シャープは言いました。彼は、自分たちがいかに怪しげに見えるかを考えていました。銃は持っていましたが、コートや上着の下に隠している。 将校はまた何か言いました。 「礼拝堂に入るように言っています」 と、ハリスが訳しました。 2人の兵士が回りこみました。 シャープは彼らを倒し、礼拝堂の回廊で抵抗することも考えましたが、すぐにそれを捨てました。 逃げ切れるかどうかわからないし、死人も出る。そうすれば政治的にとんでもない問題になる。 「こんなことになって残念だ。すまん、みんな」 なすすべもなく、彼は言いました。 今日は短くてすみません。 でもようやくやる気になったということで、ご勘弁ください。 今後も短い訳を続けることになるかもしれませんが、こまめに更新できればと思います。 これからもよろしくお願いします。
by richard_sharpe
| 2008-09-06 19:42
| Sharpe's Fury
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