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1811年3月、バルロッサの戦い。
第2部 カディス 第6章 - 4 ろうそくの光が大きな丸い部屋を照らしていました。 シャープは階段を降りきるところでしたが、そこでうずくまりました。そしてライフルの撃鉄を起こし、その金属音が背後にまでかすかなこだまを呼びました。 右手には他の階段が見え、そして左手の廊下に向かってアーチがある3つの礼拝室にも階段が見えました。 人影はなく、その代わりに1ダースものろうそくが床で揺らめいていました。それはぐるりと円を描いており、何か邪悪なものを感じさせました。まるで異教徒の儀式の場所のようでした。 壁はむき出しの石で、天井はカーブを描いていました。そこには何の飾りもありませんでした。洞窟のように寒々しく、シャープには、カディスの街が建てられたときに岩に刻み込まれたものだということがわかりました。 「後ろに気をつけろ、パット」 と彼はそっと言いました。その声は広い部屋を渡り、跳ね返ってきました。 「気をつけます」 と、ハーパーは言いました。 シャープの視界で何かが光り、彼は身をよじってライフルを構え、奥の廊下から包みが投げ込まれたのだということに気づきました。床に落ちた音が波のように岩にこもりました。そして包みは滑り、ろうそくの輪のほぼ中央で止まりました。 「手紙だ」 と、モンセニーの声がどこかから響いてきました。 「今晩は、伯爵」 パンフリーは黙っていました。シャープは暗い廊下を見つめていましたが、どこからモンセニーの声が聞こえてきたかはわかりませんでした。 エコーが音を散らし、その源の手がかりを消していました。 「金を置きなさい、閣下」 と、モンセニーは言いました。 「そして手紙をとって、この仕事を終わりにしよう」 パンフリーは思わずその言葉通りに前に踏み出しかけましたが、シャープがライフルの銃身で彼をさえぎりました。 「手紙を確認する」 と、シャープは大声で言いました。包みは紐で縛られていました。 「3人で手紙を確認しなさい。そして金を置いていくのだ」 シャープにはやはりモンセニーの居場所はわかりませんでした。彼が手紙を投げた場所は奥の階段の当たりのようでしたが、今は他の小部屋にいるだろうと思われました。 ひとつの小部屋に一人ずつ? モンセニーはパンフリーとその連れを部屋の中央に引き出そうとしており、そこはおそらく銃に囲まれているのでした。 袋のねずみだな、と、シャープは思いました。 「わかってるな」 とシャープは言いながら、ライフルの撃鉄をおろしました。 「パット、閣下の腕を取って、そのときには急ぐんだ」 彼はハーパーがわきまえていることを知っていましたが、パンフリー伯が混乱するだろうと思ったのでした。 今重要なのは包みから離れることで、そこは照らされており、虐殺の場でした。 モンセニーの意図が殺害にあるかどうかはシャープには確かではありませんでしたが、金が望みであるのは確かで、殺さなければならないとなったら躊躇しないだろうことも確かでした。 1500ギニーはお宝でした。 フリゲート艦を建造することもでき、教会いっぱいの弁護士を買収することもできる。 「まずゆっくりだ」 と、シャープはささやきました。 「そのあとすばやく」 彼は立ち上がり、階段の最後の段を降り、そして左に身を翻していちばん近い小部屋に飛び込みました。そこにはごつい体つきの男が立っていて、驚いたようにシャープを見つめました。彼はマスケットを握り締め、まだ発砲の準備はできていなかったようで、それでもシャープに躍りかかってきました。シャープはライフルの銃床で、男の顎を殴りつけました。そして左手でマスケットをつかみ、投げ捨てました。 男はシャープを殴ろうとしましたがハーパーが7連発銃の銃床で後頭部を殴り、男は殺された牡牛のように音を立てて倒れました。 「見張っていろ、パット」 とシャープは言い、部屋に戻りました。影がちらりと動くのが見え、シャープは撃鉄を起こしました。その音で影はまた動きました。 「伯爵!」 と、モンセニーは闇の中で鋭く叫びました。 「坊主、うるさいぞ!」 と、シャープは怒鳴りました。 「こいつどうします?」 と、ハーパーが尋ねました。 「蹴り出せ」 「金を置いていけ!」 と、、モンセニーは叫びました。彼はいらだっていました。すべてのことが、彼の計画を裏切って進行しているのです。 「手紙を見てからだ!」 とパンフリー伯は叫び返しましたが、その声は上ずっていました。 「見ればいい!出てきなさい、閣下。全員で。出てきて金を置き、手紙を確認しろ!」 ハーパーが半ば気を失った男を明かりの中に押し出しました。男は部屋を横切って反対側の小部屋に飛び込みました。 シャープはパンフリーの傍らにうずくまりました。 「閣下、動かないでください」 と、彼は言いました。 「パット、煙玉だ」 「何をするつもりだ?」 と、パンフリーは色をなしました。 「手紙をとってくるんですよ」 彼はライフルを投げ出し、さっきの男から取ったマスケットを手に取りました。 「伯爵!」 と、モンセニーが叫びました。 「ここだ!」 「急いで欲しい」 「姿を見せるようにいってください」 と、シャープはささやきました。 「姿を見せろ!」 と、パンフリー伯は叫びました。 シャープは他の小部屋に続いている廊下の暗がりに戻りました。 何も動くものはありませんでした。 ハーパーの火打ち箱がカチッという音を立て、火花が見えました。そして一つ目の煙玉の導火線に火がつけられました。 「手紙が欲しいなら、出てこい!」 と、モンセニーが叫んでいました。 二つ目、三つ目、四つ目と、導火線に火がつきました。火はうねりながら玉の中に消え、見たところ何も起きないようでした。ハーパーは爆発を恐れるように、離れたところに並べました。 「私に金をとりに来させたいのか?」 と、モンセニーは叫び、その声は祭室に響き渡りました。 「なぜそうしない?」 と、シャープも叫びました。答えはありませんでした。 4つの玉から煙が噴出し始めました。最初は細いものでしたが、いきなりそのうちのひとつがブスブスと音を立て始め、煙は驚くほど濃いものになりました。シャープはそれを持ち上げました。手のひらに玉の外側の張り子が暖かく感じられました。 「伯爵!」 モンセニーは怒声をあげました。 「今行く!」 とシャープは叫び、大きな部屋に玉をひとつ転がしました。残りの3つもひどいにおいの煙を上げており、それをハーパーが立て続けに投げ込みました。煙が立ち込め、視界が突然悪くなりました。 「パット」 と、シャープは言いました。 「閣下を階段の上へ!急げ!」 シャープは息を止め、部屋の中央に走っていって包みをひったくりました。そして階段に戻ると、マスケットを持った男が向かってきました。 シャープはマスケットを振りかざし、男の目にたたきつけました。男は倒れ、シャープは階段に向かいました。ハーパーはパンフリーの肘をつかみ、階段を上りきったところでした。 マスケットが一発発射され、祭室にこだましてまるで一斉射撃のようでした。 弾丸はシャープの頭上の天井に当たり、小石がばらばらと落ちてきました。 シャープは階段を上がって彼を待っていたハーパーに追いつき、しかしそこに向かってマスケットを持った二人の男が身廊を走ってきました。 銃撃になるか扉にたどり着くほうが早いか。 「梯子だ、パット!」 と、シャープは言いました。 身廊を走っていけば、モンセニーが男たちに発砲を命じるだろうと思われたのでした。 「早く!」 と、シャープはパンフリーを手近の梯子に押しやりました。 「パット、引っ張りあげろ!急げ!」 銃声が響きました。 弾丸がシャープを通り越して礼拝室を覆う紫色の布を貫通しました。 シャープはめくら撃ちにマスケットを下に向けて撃ち、そして自分のライフルを肩からはずして撃ちました。 煙の中で誰かが叫んでいるのが聞こえましたが、誰も追いつけませんでした。 シャープは足場に向かって走り、そして梯子を上っていました。 生き延びるために。
by richard_sharpe
| 2008-02-13 19:30
| Sharpe's Fury
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