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1811年3月、バルロッサの戦い。
第2部 カディス 第4章 - 4 時折閃く明かりが、フランス軍の砦の場所を教えてくれました。 ウィリアム卿は、そこに3つの砦があることをシャープに話しました。 いちばん遠いのがマタゴーダでカディスに最も近く、巨大な迫撃砲が備えられていて、カディスにダメージを与えているのだということでした。 その南にはサンノゼ砦があり、さらに南の、イスラ・デ・レオン寄りにはサン・ルイス砦があるのでした。 「われわれが行うのは」 と、ウィリアム卿は説明しました。 「サン・ルイスを通り過ぎ、河口の小さな湾に出て、サン・ルイとサンノゼの間を塞ぐのだ。いわゆる縦射をするのさ」 「湾には何があるんです?」 「でかいいかだが5隻だ」 と、シャープの質問を聞いていたサー・トーマス・グレアムが答えました。 「連中は北風が吹くのを待って、わが艦隊に押し寄せようとしているところだ。そうはさせん」 艦隊はやや大型の商船を交えた小型艦ばかりでしたが、グレアムの兵士たちとラペーニャ将軍のスペイン兵たちを南へ運ぶものでした。彼らは後方から前線へ援軍として送られているのでした。 「われわれは今夜、筏を焼却する計画を立てている」 と、サー・トーマスは続けました。 「夜中過ぎだ。きみは第87連隊と一緒に闘うことを喜んでくれるかな?」 「光栄です」 「ゴーフ少佐!シャープ大尉に会ったことは?」 サー・トーマスの影からひとりの将校が姿を見せました。 「ありません」 と、ゴーフは答えました。 「しかしシャープ、きみの名前はタラベラから聞こえてきていたよ」 「シャープとその軍曹は、きみの兵士たちと今夜戦うという偉業を成し遂げたいと願っているのだよ、ヒュー」 と、サー・トーマスは言いました。 「大歓迎です」 と、ゴーフは柔らかいアイルランド訛りで答えました。 「この迷子の二人のライフルマンたちに気をつけるように、兵士たちに言っておいてくれないか?フランス軍のイーグルを奪ってきた男たちを間違って撃たないように。じゃあシャープ、ここで。ゴーフ少佐は湾の南側で部下たちを下ろす。歩哨がいるだろうが、面倒を見てやるには十分だろう。サン・ルイス砦からフランス軍が援軍を送ってくるのではないかと予想している。だから面白くなるぞ」 サー・トーマスの計画では、2隻の艀を南に、もう2隻を北側につけ、兵士たちを上陸させてフランス軍の守備隊を降伏させ、そこで予想される反撃を食い止めるというものでした。 工兵たちを乗せた5隻目の艀が上流のフランス駐屯地にある筏に火をかけ、捉えて爆破する予定でした。 シャープはデッキにうずくまっていました。 ウィリアム・ラッセル卿は冷めたソーセージとワインのビンを持ってきており、スライスされたソーセージがまわされました。水夫は大きな艪を操り、艀はさざ波の中をしっかりと進んでいきました。 舳先にはスペイン人の男がひとり立っていました。 「われわれのガイドだ」 と、サー・トーマスは説明しました。 「漁師だ。いいやつなんだ」 「われわれを嫌ってはいないのですか?」 と、シャープは尋ねました。 「嫌っている?」 「スペイン人がどんなにわれわれを嫌っているかということを、聞かされ続けていたものですから」 「彼はフランス人を嫌っている。私と同じようにね、シャープ。私はきみもフランス人を憎んでいると信じているがね」 シャープは考え込みました。憎んでいる?彼は自分がフランス人を憎んでいるかどうか、分かりませんでした。 「やつらが好きではないです」 「私はそうだった」 と、サー・トーマスはいいました。 「そうだった、というと?」 「私はフランス人が好きだったのだよ」 と、サー・トーマスは言いました。将軍は前方にかすかに見える要塞の明かりを見つめていました。 「好きだったのだよ、シャープ。彼らの革命に共感していた。人類の曙だと思ったものだ。自由?平等?博愛?私はそういうものを全部信じていた。まだ信じている。しかし今ではフランス人を憎んでいる。ずっと憎んでいるのだ、シャープ。妻が死んだ日から」 シャープは、大使が一人の娼婦にラブレターを書いた愚かさの告白を聞かされたときと同じような、いたたまれなさを感じていました。 「19年前のことだ。フランスの南部にいた。1792年6月26日だった。妻のメアリが死んだ日だ。彼女を岸に運んで棺に入れ、彼女が望んだようにスコットランドで埋葬するつもりだった。ボルドーまでの馬車も雇い、そこで帰国の船を探そうとした。シャープ、そしてトゥールーズを出たときだった」 将軍の声は話し進むにつれ、怒りに満ちてきていました。 「酒の入ったゴロツキのフランス人の群集が、馬車を調べると言い始めた。私は許可証を見せた。頼み込み、敬意を持って彼らをなだめた。しかし奴らは私を無視したのだよ、シャープ。フランス軍のユニフォームを着た連中だった。彼らは棺をこじ開け、私の大切なメアリを凌辱したのだ。シャープ、その日から私はやつらの民族に対して鬼になった。復讐のために軍に志願し、神に毎日祈っている。この地上からフランス人を消し去るまで、私を長生きさせてくれるように」 「アーメン」 と、ウィリアム・ラッセル卿が言いました。 「そして今夜は、メアリの敵討ちだ」 と、サー・トーマスは嬉しそうに言いました。 「何人かは殺してやる」 「アーメン」 と、シャープは言いました。
by richard_sharpe
| 2008-01-19 17:24
| Sharpe's Fury
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