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三冬のシャープ・サイト
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1811年3月、バルロッサの戦い。
第1部 グアディアナ川 第1章- 4 火はスタリッジの作品に這いこみ、火薬が爆発しました。空は騒音の中でかげり、炎と煙と木材が空中を満たし、そして努力の結果として舟橋は川に落ち込みました。梁は砕けて離れ、フランス兵は後ろに吹き飛ばされ、あるものは死に、あるいは炎に包まれ、そして舟橋は水のすさまじい力で錨の鎖を引きずりながらぶつかり合いました。 シャープとハーパーは、平底の舟橋のひとつにしがみついていました。 シャープは爆発の衝撃でめまいがして立っていられず、それでも英軍側の岸に向かって這ってでもたどり着こうとしていました。しかし舟橋はぶつかり合いながら徐々に互いをつないだ鎖にかかる負担を増し、フランス軍の榴弾砲が轟きました。ムーン准将を運んでいた兵士の一人が血を吐いて倒れ、准将は彼の下敷きになりました。 シャープは膝をつき、川に落ちないよう何とか舟橋につかまることができました。 マスケットの銃声も聞こえていましたが、射程から外れているようでした。 准将の馬が血を吹き上げて暴れながら、川を流されていきました。 砲弾が橋の反対側に命中しました。 フランス兵たちは東側の岸に皇太子、底からマスケットを撃ちかけていました。煙が谷間を覆っていました。 シャープの傍らで銃弾が撥ね返り、榴弾砲がまた炸裂しました。白い鳥の群れがパニックを起こして飛び立ちました。 そして、橋が突然震動し、静かになりました。 6艘つながった舟橋の真ん中のつなぎ目が外れ、川を流され始めたのでした。 シャープは片膝をつき、ライフルを装填すると、フランス歩兵隊を狙って撃ちました。ハーパーも7連発銃を肩にかけ、ライフルを撃っていました。ライフル隊員のスラッタリーとハリスも加わり、将校を狙いました。しかし煙が晴れてみると、まだ将校たちの姿がありました。 舟橋は急流に差し掛かって、廃材などと一緒に流されて行きました。 ムーン准将は仰向けになり、肘を支えに起き上がろうとしていました。 「何が起きたのだ?」 「流されています」 と、シャープは言いました。6人の第88連隊所属の兵士と5人のライフル隊員が一緒でした。残りのシャープの部下たちは、橋が破壊される前に逃げおおせたか、あるいは川の中でした。 そして今、シャープと准将を含めて13人は下流に流されており、100人あまりのフランス兵が岸伝いに彼らを銃で狙いながら追っていました。 13 という数字が不吉じゃなければいいんだが。と、シャープは思いました。 「西に漕ぎ寄せられるかやってみろ」 と、ムーンは命じました。 そちら側の岸では数人の英軍将校が馬を使い、その筏を捕まえようと試みていました。 シャープたちはライフルやマスケットの銃床を櫂の代わりに使って漕ぎ始めましたが舟橋はあまりにも重すぎ、無駄な努力に終わりました。筏は南へと流され続けました。 「漕ぐんだ!まったく!」 と、ムーンは怒鳴りつけました。 「できるだけのことはしています」 と、シャープは言いました。 「足は?折れましたか?」 「ふくらはぎだ」 と、ムーンはひるんだように言いました。 「落馬した時に音がした」 「すぐに接いであげられますよ」 「そんなことはしなくていい!医者のところへ連れていってくれ!」 シャープとしては、まっすぐ川を下る以外にムーンを連れて行ける場所があるかどうか疑問でした。 フランス兵たちは背後に遠ざかり、砲声はまだ響いていましたが、対岸の英軍を狙っているようでした。 シャープはブレンのことを考えていました。そしてあの中尉が捕虜になってしまったことに、脈打つような激しい怒りを覚えました。 「あの野郎を殺してやる」 と、シャープは声に出して言いました。 「何をするだと?」 と、ムーンが問いただしました。 「あのフランス野郎を殺してやります。ヴァンダル大佐です」 「きみが今やるべきことは、私を対岸に運ぶことだ。それがやるべきことだ。しかも速やかに」 そしてこのとき、舟橋は座礁したのでした。 その地下室は大聖堂の下にあり、海蝕によって迷宮のようになった洞窟を使っていました。その敷石は代々の司祭たちの墓石にもなっていました。 礼拝堂から5つの洞窟が伸びており、その一つは迷宮に達し、他の4つは暗く深く、互いにつながりながら礼拝堂を取り巻いていました。 深夜でした。大聖堂は無人で、僧侶も帰ったあとでした。ロウソクだけが赤い炎を瞬かせていました。 大聖堂はまだ未完成で、ドームは半分しかできておらず、鐘楼にいたってはまだ手もつけられていませんでした。 ファーザー・モンセニーは東の入り口の鍵を持っていました。彼は扉を開け、6人の男たちと一緒に入ってきました。 「今夜はナイフを使え」 と、モンセニーは男たちに言いました。 「聖堂で?」 と、男たちの一人が居心地悪そうに尋ねました。 「私が全ての罪を赦そう。ここで死ぬ男は異教徒なのだ。プロテスタントだ。イギリス人だ。神も彼らの死をお喜びになる」 彼は二人を戸口に、4人を洞窟に送ると、床にろうそくをたてて火をともしました。そして扉の反対側の暗がりに立ちました。 「静かに!きたぞ。待つんだ」 そのイギリス人はモンセニーの予想よりも早く到着しました。扉が開く音が聞こえ、二人の男を従えた人物が西側の階段に姿を現しました。彼らはゆっくりと慎重に歩き、いちばん背の高い男は鞄を持っていました。 彼はあたりを見回しましたが人影が見当たらず、 「おーい!」 と呼びました。 ファーザー・モンセニーは紐で結わえた分厚い紙の束を投げ込みました。 「金を持ってきて手紙の横に置き、手紙を持って立ち去れ」 男は暗い回廊を見回しました。どこからモンセニーの声が聞こえているのかを見極めようとしていたのでした。 「馬鹿にしているのか?まず手紙を改めさせろ」 「よく確認したまえ、大尉」 この男がプラマーという英軍大尉で、英国大使館に所属していることをモンセニーは知っていました。 手紙の束の紐の結び目は硬く、プラマーにはほどけませんでした。彼はポケットのナイフを探りました。 「金を見せろ」 と、モンセニーは命じました。プラマーは鞄を開いて包の横に置きました。そしてギニー金貨を片手につかんで見せました。 「300だ。合意のとおりだ」 と、彼は言いました。その声は四方に反響し、彼を混乱させました。 「行け」 というモンセニーの言葉で、男たちが暗がりから銃を構えて現れました。プラマーが連れてきた二人の男たちの背後にもモンセニーの手下が立っていました。 「どういうことだ」 と言いかけたプラマーは、近づいてきた僧侶の手にピストルが握られているのを見ました。 「あなたは聖職者だろう?」 「われわれは皆、商人であることを試みるべきだと思っている」 モンセニーは言いました。彼の周囲には3人の男が集まってきていました。 「金を数えている間、うつぶせになっているのだ」 「なんだと」 「床に」 とモンセニーはスペイン語で言い、スペイン海軍でならした手下たちは3人の男たちを押さえ込み、床に顔を押し付けました。 モンセニーは手紙の束をつまみあげてポケットに入れ、金貨を足元に引き寄せました。 「殺せ」 と、彼は言いました。 プラマーは抵抗しようとしましたが、モンセニーのナイフが肋骨の間に吸い込まれました。殺すのは簡単でした。 他の二人も簡単に死にました。わずかな物音を立てただけでした。 モンセニーは金貨を一枚ずつ男たちに与えました。 「イギリス人はひそかにカディス占領を企んでいる。同盟軍と言っているが、スペインに対する裏切りだ。今夜、お前たちは国王のために、スペインのために、そして聖なる教会のために戦ったのだ。提督はお喜びになるし、神も報いてくださるだろう」 彼は死体を探り、いくらかのコインとナイフを見つけました。プラマーはピストルも持っていましたが、ごつく重い武器だったのでモンセニーはそれを部下の一人に与えました。 3つの死体は階段を引き摺り下ろされ、岸壁から海に投げ落とされました。 ファーザー・モンセニーは大聖堂の扉に鍵をかけ、帰途に着きました。 翌朝、礼拝堂から続く血痕のことを説明できるものは誰もいませんでしたが、毎日祈りに来る女たちの一人が、街の守護聖人である聖セルヴァンドの流した血にちがいないと言い張りました。 そしてそのころ3つの死体が打ち上げられ、プラマー大尉だと確認されて大使館に運び込まれました。あわただしく葬儀が行われ、カディスとイスラ・デ・レオンをつなぐ砂洲に、彼は葬られました。 翌日モンセニー神父は英国大使に手紙を書き、プラマーは金貨を渡さずに手紙を奪おうとしたのだと伝えました。 そして手紙を取り戻したいのなら、さらに条件をつけると。 彼は手紙に署名をしませんでした。その代わり、血に染まったギニー金貨を同封しました。 これは投資だ。と、彼は思いました。ひと財産に増えて返って来る。 その財産はモンセニーの夢をかなえることになるはずでした。 スペインの夢、栄光の再来、そして外国からの解放。 英国は撃破されることで支払わなければならないのでした。
by richard_sharpe
| 2007-10-24 18:00
| Sharpe's Fury
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