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1810年、ブサコ作戦。
第2部コインブラ 第6章 - 2 連隊は2時間ほどのちに到着しました。 ルロイの予想通り、兵士たちは不機嫌で腹をすかし、疲労困憊していました。 煙った月光に照らされ、荷車と同行の行軍は悪夢のようで、彼らは少なくとも2度、道に迷いました。 ロウフォードは薄明かりが差す時間まで、兵士たちを休ませることにしたほどでした。 フォレスト少佐はぐったりと鞍から滑り降り、横目でシャープを見ました。 「まさかきみたちは、ここにまっすぐ来られたとは言わないだろうな?」 「来ましたよ。すこし眠れました」 「なんて嫌な奴なんだ、きみは」 「迷いっこありませんよ」 と、シャープは言いました。 「道はずっとまっすぐでしたし。誰が先導したんですか?」 「シャープ。誰か知っているくせに」 とフォレストは言い、振り返って食糧の山を眺めました。 「どうやって処分する?」 「ラム酒の樽は撃てばいいと思います。小麦粉や穀物は川へ」 「もうそこまで段取りをつけたのか?」 「昨夜はよく眠りましたからね」 「こいつ」 ロウフォード中佐は連隊に休息をとらせたいと思っていましたが、昨夜のうちに到着し、睡眠もとったポルトガル軍が仕事に取り掛かり始めたので、サウス・エセックスだけを休ませるわけにも行かず、お茶の支度だけを命じ、仕事をしながら朝食をとるように言いつけました。 「ミスター・シャープ、おはよう」 「おはようございます」 「昨夜はすこしは考えてくれたかな?」 それはロウフォードにとっては言いにくい質問でした。そして、シャープが自分から謝罪について申し出てくれればいい、と考えていました。 「考えました」 と、シャープは驚くほど意欲的な調子で答えました。 「それはよかった!」 と、ロウフォードは喜びました。 「それで?」 「問題は肉です」 ロウフォードはいささか混乱してシャープを見返しました。 「肉?」 「ラム酒は撃てばいいですし、穀物と粉は川に流せばいいですが、肉なんです。燃やすわけにもいきません。何人か貸していただいて、テレピン油を探しに行きたいんですが。テレピン油漬けの肉なら、カエルどもも食べないでしょう。それかペンキか」 「きみに任せる」 と、ロウフォードは冷ややかに答えました。 「ところで事務処理をしたいのだが、司令部の場所は確保してくれたか?」 「角に酒場があります」 と、シャープは指差しました。 「印をつけてあります」 「仕事に取り掛かろう」 と、ロウフォードは言いましたが、手足を伸ばして1時間でいいから横になりたい、という意味なのでした。そして彼はシャープにうなずき、立ち去りました。 シャープはかすかに笑い、兵士たちが樽の処理をしている方向に向かって歩いていきました。 前夜到着したポルトガル兵たちは熱心に作業を進めており、残っている住民たちに避難勧告をしている兵士たちもいました。女の抵抗している声も聞こえました。 まだ早朝で、川面には霧が漂っていました。ポルトガル兵たちがラム酒の樽を撃っている音がしていました。 そのそばで、パトリック・ハーパーは斧を使って樽を壊していました。 「なぜ撃たないんだ、パット?」 と、シャープは尋ねました。 「装備を無駄にするなということで、スリングスビー中尉がやらせてくれないんです」 ハーパーは次の樽に斧を振るい、ラム酒が流れ出しました。 「何のために?カートリッジは山ほどあるぞ」 「そういうお達しなんですよ」 「ぐずぐずするな、軍曹!おはよう、シャープ!」 と、スリングスビーが前夜の疲れも見せない、ぴかぴかの颯爽としたいでたちで現れました。 シャープはゆっくりと振り返り、スリングスビーの頭の天辺からつま先まで、じっくりと見渡しました。その視線にスリングスビーは居心地の悪そうな表情をしました。 「おはようと言ったんだぞ、シャープ」 「あんた、道に迷ったそうだな」 「まさか。回り道だ。荷車を避けたんだ」 この小男はシャープを避けて通り過ぎ、小隊のほうに向かいました。 「しっかりやれ!戦争に勝つためだ!」 「まったくね。戦争しているほうがマシだ」 と、ハーパーがそっとつぶやきました。 「何か言ったか、軍曹」 「俺と話していたんだ」 と、シャープは割って入りました。スリングスビーは後ずさりしました。シャープは彼を捕まえ、兵士たちから聞こえないところまで連れて行きました。 「彼は俺と話していたんだ、このクソ野郎」 と、シャープは言いました。 「もし俺が誰かと話しているときにまた割り込むようなことがあったら、あんたのハラワタをケツの穴から引っ張り出して、喉にグルグル巻きにしてやる。中佐に報告しに行くか?」 スリングスビーは身震いし、しかしシャープの言葉を振り払い、聞かなかったことにしたようでした。そして猟犬に追われたウサギのように、細い道を抜けて兵士たちのほうに戻っていきました。 そのとき、ポルトガル兵たちが射撃を続けているところから、ヴィセンテ大尉がシャープを見つけ、笑いながらシャープに向かって歩いてきました。 しかし彼よりも早く、ロウフォード中佐が急ぎ足でやってきました。 「シャープ!ミスター・シャープ!」 シャープは中佐に敬礼をしました。 「私は文句の多い男ではない」 と、中佐は文句を言い始めました。 「きみもそれは承知だと思うが、シャープ。私は快適ではない環境に慣らされてきた男だ。しかしあの酒場では事務作業はできない。こんな街中では!ベッドは南京虫だらけだ!」 「もっといい場所をお望みですか?」 「そうだ、シャープ。緊急だ」 シャープは振り返りました。 「ハーパー軍曹!手伝ってくれ。ハーパー軍曹を借りてもよろしいですか、中佐?」 ロウフォードはうなずきました。 「30分ほどいただけますでしょうか」 「私は宮殿を見つけろといっているわけじゃない。もう少しマシなところを」 シャープはハーパーに合図をし、ヴィセンテのほうに近づきました。 「あんたはここで育ったんだったな」 「そういっただろう?」 「じゃあ、フェラグスの家も知っているな?」 「ルイス・フェレイラ?」 と、ヴィセンテは警戒の色を浮かべました。 「その弟の家は知っているが、ルイス?どこかに住んでいることは確かだろうけれど」 「弟の家に案内してもらえるか?」 「リチャード」 と、ヴィセンテは警告しようとしました。 「フェラグスはただものではないんだ」 「知っているさ」 と、シャープはさえぎりました。 「こいつは奴がやったんだ」 シャープは、薄くなりかけている目の周りのあざを指差しました。 「ここからどれくらいだ?」 「歩いて10分だ」 「連れて行ってくれるか?」 「上官に許可を得てくる」 ヴィセンテはそういうと、馬上で日傘を広げているロジャース・ジョーンズ大佐の元に急ぎました。 大佐がうなずくのが見え、シャープはロウフォードに向き直りました。 「20分後にはご案内します」 そしてハーパーの肘を取り、ヴィセンテの後から埠頭を離れました。 「スリングスビーの馬鹿野郎」 と、歩きながらシャープはつぶやきました。 「あの馬鹿野郎、馬鹿野郎、馬鹿野郎、馬鹿野郎」 「俺は聴いていませんからね」 と、ハーパーは言いました。 「そのうち生皮をひん剥いてやる」 「誰のことだ?」 とヴィセンテが尋ねました。 「スリングスビーっていう馬鹿野郎のことさ。まあ、そいつの心配は後だ。フェラグスについて何か知っているか?」 「ほとんどの住人は彼を恐れている」 と、ヴィセンテは答えました。 「彼は犯罪者だ。しかし貧しい家庭で育ったわけではないんだ。彼の父親は私の父の同僚で、自分の息子がモンスターだということに気づいていた。父親も、僧侶たちも、彼の邪悪さをたたき出そうとしたんだが、結局ルイスは悪魔の息子だったんだ」 ヴィセンテは十字を切りました。 「あんたの親父さんは教師だったな?」 「法律を教えていた。今は母と一緒にオポルトでケイトを見ていてくれている。まあ、私の父のような境遇ではフェラグスのような男のことは、よくわからないはずだ」 「フェラグスには、俺みたいな男が必要なんだ」 と、シャープは言いました。 「でもあなたも殴られたじゃないか」 「俺はもっとひどくやってやったさ」 シャープはフェラグスへ与えた一撃の手ごたえを思い出していました。 「で、中佐は家が欲しいそうだ。だからフェレイラの家を見つけて中佐にあげるんだ」 「それはあんまり賢いやり方じゃない。私的な報復を戦争に置き換えている」 「もちろん賢いやり方じゃない。だが楽しいじゃないか。楽しんでいるか、軍曹?」 「今までこんなに楽しかったことはありませんよ」 と、ハーパーは気難しい表情で答えました。 彼らは山の手にあたる、街の高くなった部分を歩いていました。そして日の当る狭い前庭の向こうに大きな扉を持った古い石造りの家に向かいました。通用口は厩につながり、3階建ての建物の窓はよろい戸が閉じられていました。 「これがペドロ・フェレイラの家だ」 と、ヴィセンテは言いました。そして石段を登りながら、シャープに目を向けました。 「フェラグスは多くの人を殺したらしい」 「俺もだ」 と、シャープは言ってドアを叩きました。 まもなくエプロンをかけた女性が出てきて、シャープを手で押しのけようとしながら、ポルトガル語で何かまくし立てました。 彼女の後ろには若い男が立っていましたが、シャープの姿を見ると暗がりに下がっていきました。 「ルイス・フェレイラがどこに住んでいるのか聞いてくれ」 と、シャープはヴィセンテに言いました。 「セニョール・ルイスはここにしばらく滞在しているそうだ。今はいないということだが」 「ここに住んでいる?」 とシャープは言ってにやりと笑い、チョークを取り出して青く塗られた扉に SE CO と記しました。 「英軍の重要人物が今夜ここをお使いになり、ベッドと食事を必要としていると伝えてくれ」 シャープはヴィセンテと白髪混じりの女との会話を聞いていました。 「厩があるかどうかも聞いてくれ」 あるということでした。 「ハーパー軍曹、埠頭への道はわかるか?」 「丘を下ります」 「中佐をここにお連れしろ。街でいちばんの家で、馬もつなげると伝えてくれ」 シャープは女を押しのけて家に入りました。奥からピストルを腰に下げた男が見ているのがわかりましたが、彼はピストルに手を伸ばす様子もなかったので、シャープは扉を開き、そこには机と暖炉の上の肖像画、本が詰まった書棚があるのを確認し、もう一つの扉を開けました。そちらは快適な居間で、凝った作りの調度に、ピンクの絹張りのソファがありました。 ヴィセンテは食って掛かる召使を一生懸命なだめていました。 「彼女はフェレイラ少佐のコックだ。そして少佐もその兄も、喜ばないだろうといっている」 「そのために俺たちはここにいるのさ」 「少佐の妻子はここを発ったそうだ」 と、ヴィセンテは通訳を続けました。 「家族の前で殺したくないからな」 「リチャード!」 ヴィセンテはショックを受けたようでした。 シャープは笑い、そして2階に上がりました。ヴィセンテとコックがついてきました。 大きな寝室があり、シャープは窓を開け放ちました。 「完璧だな」 天蓋つきの、ゴブラン織りのカーテンに囲まれたベッドを見て、彼は言いました。 「中佐は快適にここで仕事をお続けになるだろう。うまくやってくれたな、ホルゲ。その女にロウフォード中佐はシンプルでよく火の通った食事がお好みだと伝えてくれ。食材はこちらで用意するが、全部うまく料理してくれるように。エスニックな香辛料はダメだぞ。下にいる男は誰だ?」 「召使だそうだ」 「ほかにこの家にいるのは?」 「厩の下男たちだ」 と、ヴィセンテはコックの答えを訳しました。 「それから台所の下働きと、ミス・フライ」 シャープは何か聞き間違えたかと思いました。 「ミス・誰だって?」 コックは怯えているように見えました。彼女は早口で話し、最上階を見上げていました。 「彼女が言うには、子供たちの家庭教師が閉じ込められているそうだ。英国女性だ」 「なんだって?閉じ込められている?なんていう名だ?」 「フライ」 シャープは屋根裏部屋に向かって駆け上がりました。 「ミス・フライ!」 と、彼は怒鳴りました。 「ミス・フライ!」 叫び声がし、ドアが内側から叩かれました。しっかりとロックされていました。 「下がれ!」 と、彼は叫びました。 彼は思い切りドアを蹴り、かかとを錠に打ち付けました。屋根裏全体が震動したかのようでしたが、それでもドアは開きませんでした。もう一度蹴り、何かが壊れる音がしました。そしてさらに力いっぱい蹴りつけて、ようやくドアは開きました。 窓の下には、両手で膝を抱えて座り込んだ、淡い金髪の女性がこちらを見ており、シャープも見返しましたがすぐに目を背けました。マナーを思い出したのです。というのも、印象的なほどに美しい彼女は、産みたての卵のように素裸だったからです。 「何なりとお言いつけを」 と、彼は壁を見つめたまま言いました。 「イギリス人なの?」 と、彼女は尋ねました。 「そうです」 「それなら、何か着る物をとってちょうだい」 と、彼女は命じました。 そしてシャープはそれに従いました。 フェラグスは明け方、フェレイラ少佐の妻子と6人の召使たちを送り出し、ミス・フライを屋根裏部屋にとどまらせました。 「あんたは英軍と一緒に行くんだ」 「この子たちには彼女が必要です!」 と、フェレイラ夫人は抗議しましたが 「彼女の役割は終わった。同胞と去るべきだ」 フェラグスはいい、サインをするから、紹介状を自分で書くようにとセイラに言いつけました。 「私の荷物が馬車に乗ったままです」 「降ろさせておく。あんたは部屋に戻れ」 セイラは屋根裏の自室で紹介状を書き始めました。 熱心でよく働くこと。 子供に好かれるかどうかは、書きませんでした。それが自分の職務に必要とは思えなかったし、子供たちが自分を好いていたかどうかもわからなかったからです。 そしてペンを置いたとき、足音が聞こえました。すぐにフェラグスだとわかりました。 ドアを閉めた方がいいと予感が告げましたが、立ち上がるよりも早くフェラグスが入ってきました。 「俺はこの街に残る」 と、フェラグスは言いました。 「お好きなように」 セイラは内心の動揺を隠して言いました。 この高慢な英国女め。ここまでだ。 「あんたは俺と残るんだ」 セイラは一瞬聞き間違えたかと思いました。 「私は英軍と一緒に行くんです」 「あんたは俺といるんだ」 「冗談じゃありません!」 「そのうるさい口を閉じろ!」 フェラグスは、セイラの顔に衝撃が走るのを見ました。 「出て行ってください」 セイラはまだ平静に話そうと努力していましたが、もう動揺を隠すことはできませんでした。フェラグスはそれを楽しんでいました。 「これが紹介状か?」 「サインをくださいますね?」 フェラグスはそれを引き裂き、海軍で覚えた汚い罵り言葉を、思いつく限りセイラに投げつけ、彼女の怒りを楽しみました。 「女、お前の今の義務は、俺を喜ばせることだ」 「頭がおかしいんだわ」 フェラグスは笑いました。 「俺がお前にできることはどんなことだと思う?ミゲルと一緒にリスボンへ送り、モロッコかアルジェに売る。アフリカのやつらが、白い肌の女にいくら払うか知っているか?俺が売った女は、お前が初めてじゃないんだ」 「出て行ってください!」 セイラは何か武器になるものを探しましたが、インク壺くらいしかありませんでした。彼女は貞淑な女性は身を汚される前に死を選ぶ、ということを思い出しましたが、自分が窓から身を投げるという考えは現実には無理だということに気づかされました。 「服を脱げ」 「出て行って!」 といった途端に、セイラは腹部にフェラグスのこぶしを受けました。フェラグスは彼女のブルーのドレスを引き裂いて剥ぎ取りました。 下着に手が伸び、彼女はしっかりとそれを押さえようとしましたがフェラグスに抗うことはできず、平手打ちをくらって耳鳴りがし、目がくらんでいる間に、彼女の衣服は窓から中庭に投げ落とされました。 そのとき、ミゲルがフェレイラ少佐の到着を告げる声が聞こえ、少佐の足音も響いてきました。 「戻ってくるからな、ミス・フライ」 フェラグスは扉に鍵をかけて立ち去り、セイラは裸のまま、恐怖と屈辱に震えて、窓の下にうずくまっていました。 そして英語の呼び声が聞こえ、扉が破られ、目の周りにあざを作り、浅黒い頬に傷のある、グリーン・ジャケットの背の高い男が彼女を見つめていました。 「何なりとお言いつけを」 と男は言い、彼女は救い出されたのでした。 フェレイラ少佐はフランス軍に食糧を売る段取りをつけ、それをフェラグスに報告するために戻ってきました。 「支払いを約束した」 「よし」 「元帥自身の保証つきだ」 「よし」 「メアルハダの南の聖ヴィンセント寺院でバレット大佐と会うことになっている。竜騎兵たちがまっすぐ倉庫に向かう」 「いつだ?」 フェレイラは少しの間考えているようでした。 「今日は日曜だから、英軍は明日発つだろう。フランス軍が来るのは月曜か、火曜だ。たぶん月曜日だ。明日の夜までにはメアルハダに行かなければ」 フェラグスはうなずきました。実際、弟は良くやったと思っていました。 「では明日出発だ。今日はどうする?」 「私は部隊に報告に行かなければならない。明日のことは何とか言い訳を考えておく」 「では、俺は倉庫の警備をすることにしよう」 と、フェラグスは屋根裏部屋の白い肌のおもちゃのことを考えながら言いました。 彼らは倉庫に向かい、中にはいったとき、フェレイラは顔をしかめました。 「におうな。例の死体か?」 「一つ増えた」 とフェラグスは自慢げに言いました。 外からミゲルがフェラグスの名を呼びました。 「例のイギリス人です」 「どのイギリス人だ?」 「丘の上にいたやつです。前に修道院であなたが襲った奴です、セニョール」 フェラグスの上機嫌は川霧のように消えました。 「奴がどうした?」 「少佐のお邸に」 「なんだと!」 と叫びながら、フェラグスはピストルをぬきました。 「やめろ!」 とフェレイラは兄を止め、ミゲルを見ました。 「ひとりか?」 「いいえ。居間は3人で、一人はポルトガル将校です。あとから中佐が来るそうです。お邸を使うと」 「宿舎にする気だな。1ダースはやってくるだろう。まだ例のイギリス人をやる時期じゃない。ここで、今というのは無理だ」 と、フェレイラは言いました。それは正しいアドバイスでした。フェラグスにはわかっていましたが、まだセイラのことが気になりました。 「連中は女を見つけたか?」 「はい、セニョール」 「女だと?」 と、フェレイラは尋ねました。 「なんでもない」 とフェラグスは答えました。実際、セイラはもうどうでもいい問題でした。シャープ大尉という、もっと面白いおもちゃが手に入ったのです。 あるアイデアが彼の頭に浮かびました。 「もし連中が、この物資のことを知ったらどうするかな?」 「破壊するだろう」 と、フェレイラは答えました。 フェラグスはもう一度考えてみました。そして、あのイギリス人の立場だったら自分はどうしようとするか。 シャープ大尉の反応は? リスクはある。しかしシャープは既にフェラグスに戦争を仕掛けてきている。さもなければ、わざわざ弟の邸に行くはずなどない。シャープは挑戦状を叩きつけてきたのだ。リスクは冒すべきだ。 「ポルトガル将校がいると言ったな?」 「ええ、セニョール。知っている奴です。ヴィセンテ教授の息子です」 「クソみたいなもんだ」 とフェラグスはせせら笑い、再び考え、そして結論を出しました。 「こういうふうにする」 と、彼はミゲルに言いました。 フェラグスは、罠を仕掛けようとしているのでした。
by richard_sharpe
| 2007-03-18 21:21
| Sharpe's Escape
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