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1810年、ブサコ作戦。
第1部 第4章 - 2 ピクトン将軍の言葉を聞いたルロイ少佐は、シャープに馬で近づいていきました。 「ピクトンを喜ばせたぞ」 と、彼はピストルを引き抜きながら言いました。 「彼は、ロウフォードにウェールズ人の血が混じっているといったくらい、喜んでいたぞ」 シャープは声を上げて笑いました。 ルロイはいちばん近くにいるフランス軍の隊列めがけて拳銃を発砲しました。 「シャープ、私がガキだった頃は、アライグマをよく撃ったんだ」 「アライグマって?」 「役に立たない生き物さ。子供の標的になるくらいだ。なんでフランス軍は動かないんだろうな?」 「動きますよ」 「きみの小隊を連れて行ってしまうぞ」 ルロイはシャープが自分の目で確認してくるようにアドバスしてから、首を振りながら去っていきました。 シャープはスリングスビーが小隊を率いて突撃態勢で坂を駆け下りていくのを見ました。 スリングスビーはヒーローになりたいのか?1個小隊だけで、フランス軍を突破できると思っているのか? まもなく6000人のフランス兵が、坂をなだれ落ちるように撤退をはじめ、軽歩兵隊などひとたまりもなく蹴散らされるのは、シャープには予想できました。 砲声が聞こえ、その瞬間が迫ってきていました。 シャープは馬腹を蹴り、丘を駆け下りました。 「本隊に戻れ!戻れ!早く!」 スリングスビーが憤慨した顔つきで彼を見ました。 「敵を捕まえたところだ。引き返すわけには行かない!」 シャープは馬から下り、手綱をスリングスビーに渡しました。 「本隊にもどれ、スリングスビー!命令だ!早く!」 「しかし・・・」 「早くしろ!」 シャープは軍曹のように怒鳴りました。スリングスビーはしぶしぶ馬に乗り、シャープは兵士たちに叫びました。 「連隊に帰還!」 そして、フランス軍が壊走を始めました。 兵士たちはどんな将軍が望むよりも長く持ちこたえていました。そして丘の頂上まで迫り、勝利を目前にしていたのに、十分な増援を得られず、その間に英軍・ポルトガル軍は隊列を立て直し、砲撃を始めたのでした。 どんな軍隊も持ちこたえられないほどの砲撃でしたが、フランス軍はよく耐え、そして今はとにかく生き延びるために走るのでした。 尾根線をブルーのユニフォームが埋めるのが、シャープから見えました。 シャープと兵士たちも走り出しました。逃げ切れない。 「方陣を組め!」 シャープは怒鳴りました。騎兵の襲撃を受けたときの態勢でした。30~40人の兵士たちがシャープの下に集まり、外側に向かって銃剣を構えました。 ハーパーは7連発銃を肩からはずしました。 フランス兵たちはレッドコートをライフルマンの陣形の左右に流れるようにして彼らを避けて走って行きましたが、シャープは方陣のままゆっくりと移動を続けさせました。 「ゆっくり進め」 と、シャープは静かに言いました。 「ゆっくりだ」 そのとき、白馬に乗った将軍が剣を引き抜き、方陣に向かってまっすぐに走ってきました。彼は敵の姿に驚き、剣を低く構えました。 ハーパーが引き鉄を引きました。馬の頭と、将軍の姿が血しぶきの中に消えました。馬の体が斜面を滑って向かってきて、シャープは左側に避けるように兵士たちに叫びました。 額に弾痕を受けた馬の主は、兵士たちの足元に滑り落ちてきて止まりました。 「将軍じゃないですか」 と、パーキンスが驚いていいました。 「落ち着け。左に寄れ」 彼らはフランス兵の流れから外れることができました。その後を追う英軍・ポルトガルへいたちの発砲した銃弾が、彼らをかすめました。 「突破する!」 シャープは叫び、兵士たちは連隊の本隊に向かって走り始めました。 「パーキンス!何をやっている」 ハーパーは振り返って叫びました。 「軍曹、これ、将軍です」 パーキンスは死体をずっと引きずってきて、その傍らに膝を突き、ポケットを探り始めたところでした。 「そのままにして置け!」 スリングスビーが戻ってきました。 「第9小隊の元に集結だ。きちんとしろ!ほうっておけといっている」 彼はその命令を無視しようとしたパーキンスを怒鳴りつけました。 「軍曹、こいつの名前を控えて置け!」 スリングスビーはハックフィールドに命令しました。 「パーキンス!いつもどおり探していいぞ。中尉!」 「はい」 と、スリングスビーは目を見開いてシャープを見つめました。 「こっちへ来い」 シャープは誰にも聞こえないように、小隊から少しはなれたところへ彼を連れて行きました。 「この馬鹿野郎、よく聞けよ。お前はここで小隊を全滅させるところだった。全滅だ!連中はそれを知っている。だから闘い方がわかるようになるまで黙っていろ」 「侮辱的な言い方だぞ、シャープ!」 スリングスビーは抗議しました。 「そのつもりだ」 「侮辱されて、黙っているわけにはいかない」 シャープは微笑しました。いやな笑い方でした。 「スリングスビー、俺が何者か教えてやろう。このチビの馬鹿野郎、いいか、俺は人殺しだ。この30年、殺し続けてきた。決闘がお望みか?俺はかまわないぜ。剣でも、ピストルでも、ナイフでも、お前の好きなものでいい。だがそれまでは口を閉じているんだ」 彼はパーキンスのところに戻りました。 「何があった?」 「現金です。それから鞘と」 鞘にはナポレオンの頭文字が金で縫い取りされていました。 「金の半分を取って、半分は他の連中に分けてやれ」 フランス兵たちは、全て撤退していました。残っているのは死者と負傷者だけでした。谷底のフランス軍の発射した砲弾が、そのうえで炸裂しました。 その中を英軍・ポルトガル軍の突撃隊は斥候の一団を組織していました。 シャープはロウフォードや他の上官たちの命令もないまま、フランス軍を見下ろす場所に向かいました。 「ライフルマン、連中の頭を上げさせるな」 彼はフランス軍が射撃を返してこないように、部下たちにそう命令しました。 そしてシャープは望遠鏡を取り出して斜面の下に向け、グリーンジャケットの死体が無いかどうか探していました。しかしどこにもドッド伍長の気配はありませんでした。 ライフルマンたちは射撃練習のような攻撃を続け、シャープはレッドコートの兵士たちを後方に下げました。 英軍の兵士たちも戻りはじめ、フランス軍からの砲声も消えていきました。煙だけが丘の斜面を漂っていました。 そして、今度は北から砲声が響きました。 数発の砲声ののち、また全軍が雷鳴のような一斉射撃を開始しました。フランス軍が再び攻撃を始めたのです。 スリングスビー中尉は小隊に戻ってきませんでした。連隊本部に向かったようでした。 シャープは気にしませんでした。 彼は丘の斜面にいて、フランス軍を見つめながら、彼らが来るのを待っていました。
by richard_sharpe
| 2007-02-24 12:01
| Sharpe's Escape
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