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1810年8月、アルメイダ破壊作戦。
第17章 ロッソウは2分でことを片付けようとしました。 軽歩兵隊が彼の左肩越しに姿を隠し、槍騎兵隊は彼の正面にいて、歩兵連隊は谷に向けて火器を使用しようとしていました。 彼はその歩兵部隊を待つつもりなどありませんでした。突撃喇叭を吹き鳴らさせ、サーベルを振りかざし、愛馬トールの頭を高々と上げました。 トール(雷神)とは、敵の頭を噛み砕き、それを蹄に踏みにじる馬にふさわしい名でした。 鬱陶しいウサギが跳ね回ったりせず、土の状態もよく、ロッソウはそれを感謝しました。 部下たちの蹄の音を背後に聞き、鞍から振り返ると、馬たちが首をそろえ、刃も歯もきらめいていました。 フランス軍の反応は鈍く、ロッソウは彼らが新設の部隊ではないかと推測しました。槍騎兵隊は全速で敵に当るべきで、ロッソウが今まで出会ったものたちは常にそうでした。 トールを右手に突撃させ、トランペットが再び響き、ロッソウはサーベルを大きく振り回しました。早足で馬を進めながら、彼は適を正面にして高らかに笑いました。 すぐに混乱がやってきました。 フランス軍の最初の6人ほどを蹴散らし、部下たちの一隊を谷に駆け込ませ、挑みかかってくる勇敢な敵を、トールが踏みにじるに任せました。 「左へ!」 ジャーマンたちは向きを変え、フランス軍を噛み砕き、サーベルが切り込み、ロッソウは満足しました。 「中尉!歩兵を救出しろ」 そしてロッソウの任務は終わりました。 あとはトールのクールダウンに1分ほど駆けさせればよく、サーベルを向かってくる槍騎兵に向けながら、ロッソウは死ぬまでこのときのことを憶えているだろうと考えていました。そしてそのクリゲンタルの刃がフランス兵の喉笛を切り裂き、ロッソウはいつの戦いもこれくらいラッキーならいいな、などと思っていました。いい馬と、いい芝土と、いい鍛冶の鍛えた刃と、朝飯前に葬れる敵と。 彼は部下たちのはたらきを見、それを誇らしく思いました。お互いに守りあいながらの攻撃、えぐるような剣さばき。 ロッソウは、なぜウェリントンがドイツ騎兵を好むのかわかっていました。 それはフランス兵を殺すことにおいて、英国陸軍兵士に劣らないからでした。 ウェリントンの陸軍は、史上最も優秀な装備を持った軍だ。これほどの騎兵と、これほどの歩兵と。すばらしい! 召集のトランペットが響き、ロッソウはサーベルを振りました。 槍騎兵隊は完璧に撃退され、そしてロッソウは部下を一兵たりとも失っていませんでした。 敵は、ロッソウたちが3日前からこの谷間にいて、シャープの姿を待っていたことを知らなかったのでした。 そしてロッソウは、南にいるシュワルバッハではなく、自分がシャープの部隊を見つけたことを嬉しく思っていました。 歩兵たちはそれぞれ騎兵の鐙をつかんでこちらに逃げてきていました。 残りの騎兵たちを下がらせ、ロッソウは敵兵に声をかけました。 「ハノーバーでは世話になったな!」 しかしフランス兵はドイツ語を理解していない様子でした。 シャープが目を覚ましたのは、1時間後のことでした。 ハーパーが彼に覆いかぶさり、しっかりと地面に押さえつけていました。 テレサが彼の片手を握り、ジャーマンの兵士が1人、真っ赤に焼けた鉄の棒を持って近づいてきました。 シャープは夢から醒めながら、自分の肩がインド兵の槍で貫かれるのを感じ、それから逃れようとしました。 「大尉、じっとしていてください」 ハーパーが静かに語りかけ、強く押さえつけました。 すさまじい痛みが走り、火花が散って、ハーパーは全身の力を込めてシャープを抑え、しかしやがてロッソウの馬医者は満足してうなずきました。 彼らはシャープの顔に水をかけ、ブランデーを喉に流し込み、シャープは目を開き、痛みにうめきながら起き上がろうとしました。 彼はハーパーを見ました。 「すぐ治るって、お前は言っていたじゃないか」 「心配させたくなかったんですよ。でも出血で死にかけていたんです」 かれはシャープを岩にもたせかけました。 「メシだ!メシをもってこい!」 シャープは微笑を浮かべて彼を見下ろしているジャーマンの将校を見つめました。 前に会ったはずだ。どこだったかな?そうだ、憲兵たちがいた村だった。 「大尉」 「ロッソウ大尉です。何なりとご命令を!」 シャープは微笑みました。 「感謝します」 そのドイツ人はかしこまった態度を捨てました。 「それどころか。いい戦いぶりだったな!」 「損害は?」 「損害?槍騎兵だよ、大尉。怒ったヒキガエルのほうが危険なくらいだ!たかだか槍騎兵だよ。どうってことない!」 シャープはうなずきました。 「しかし助かった」 ロッソウはハーパーの手からシチューの入ったカップを受け取り、シャープの膝に置きました。 「黄金を取ってきたんだな?」 「知っていたのか?」 「何のために私がここにいると思う?南に偵察隊、私はここにいる。全部きみのためだよ、大尉。ウェリントン伯は黄金をすごく欲しがっているんだ!」 カーシーは鼻を鳴らしましたが、何も言いませんでした。シャープはシチューをすすりました。先週以来、やっと食べ物らしい食べ物を口にした気分でした。 「彼に渡せる」 「ヤー。しかし問題がある」 シャープは肩の痛みをこらえながらカップを置きました。 「問題?」 「フランス軍の偵察だ」 ロッソウは左手で、西に向かって大きく弧を描きました。 「ノミみたいにたくさんいる」 シャープは笑い出し、痛みが蘇り、しかし彼は無理に左手でカップを取ると、スプーンでビーフを口に押し込みました。 「軍に合流しなければ」 「わかっている」 「どうしても」 ロッソウの兵士たちは剣を研いでいました。 「やってみよう」 シャープはロッソウのブランデーのボトルを取りました。ドイツ人たちはブランデーを欠かすことがなく、それはシャープの喉にクリームのように滑らかでした。彼は咳き込みました。 「パルティザンは?パルティザンを見なかったか?」 ロッソウは振り返って将校の一人に声をかけ、シャープに向き直りました。 「2マイルのところをつかず離れずだ。連中は黄金が欲しいのか?」 シャープはうなずきました。そしてテレサのほうに視線を走らせました。 「それと、俺だ」 「心配するな、大尉。われわれがいてきみはラッキーだ」 ロッソウは立ち上がりながらベルトを締めなおしました。 テレサがシャープに笑いかけ、立ち上がって近づいてきました。 彼女のドレスはさらに4インチほど短くなっており、シャープの傷を縛るために切り取ったのだということが分かりました。 「これ以上怪我をすると、彼女は裸にならなきゃいかんぞ。それともわれわれも、自分で自分に切りつけることにするか!」 テレサはシャープを見て静かに言いました。 「この大尉とは前に会ったことがあるわ。ちがう?」 どうやって? シャープはそう思い、それから自分の望遠鏡が無事かどうか、気になり始めました。 背嚢に弾丸が当たり、彼は地面に伏せたのでした。 今は調べていられないな。と彼は思い、背をそらせ、ブランデーをすすりました。 テレサが傍らに腰を下ろし、軽歩兵隊の兵士たちが休息をとるのを見つめていました。 ロッソウが歩哨を立て、フランス軍の偵察隊を警戒している間、兵士たちはもう一つ渡らねばならない川があるのを忘れ、眠りに落ちるのでした。
by richard_sharpe
| 2006-10-17 18:10
| Sharpe's Gold
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