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1811年3月、バルロッサの戦い。
第3部 戦闘 第11章 - 5 少なくとも30人の将校たちがサン・フェルナンドから南に向けて騎乗していました。 彼らはサー・トーマスの軍勢が出航した時にはイスラ・デ・レオンにとどまり、そしてこの火曜日の朝、彼らは砲声で目を覚まし、彼らは非番だったので馬に鞍をつけるとリオ・サンクティ・ペトリで何が起きているのかを見るために南下したのでした。 彼らはイスラ・デ・レオンの大西洋側の長い海岸線に沿って南に向かいました。そしてそこでカディスから戦闘の様子を見物しようとやってきた騎乗の群れに合流しました。 砂浜に沿って鞭で駆られている馬車さえもがそこにいました。 都市の近くで戦闘が行われることは滅多になく、カディスの町の窓を揺るがす砲声は、地峡に沿って南に向かっている観客たちには刺激的なものでした。 舟橋を守備している無愛想な中尉は、そういった見物人たちが川を渡るのを阻止しようと最善を尽くしましたが、二頭立て二輪馬車が道沿いに鞭を鳴らしながら走ってきたときには通過を許すことになってしまいました。 その御者は英軍将校で、同乗者は女性でした。そしてその将校は中尉に向かってバリケードをどかすようにと鞭を振るったのでした。 鞭が怖かったというよりは、中尉はその将校の立派な銀モールに圧倒されたのでした。 馬車が舟橋を通り過ぎるのを、中尉は苦々しげに眺めていました。彼は脱輪して川に落ちれば良い、と思いましたが、2頭の馬はエキスパートに御されていて、馬車は無事に橋を渡って対岸にたどり着きました。 他にもやってきた馬車は大きすぎ、渡ることはできませんでした。しかし騎馬の男たちは二頭立て馬車の後について渡っていきました。 舟橋を守る急ごしらえのスペイン軍の砦を通り過ぎる時に彼らが見たものは、休息を取る兵士たちでいっぱいの海岸でした。 騎馬隊の馬は杭につながれ、騎手たちは顔に帽子を載せて横になっていました。カードで遊ぶもの、風に漂うタバコの煙。 前方にはバルロッサの丘があって、違った種類の煙が松林の東にむかって固まりながら立ち上っていました。しかし、川に近い海岸では全く静かなものでした。 ラペーニャ将軍が参謀たちと一緒にコールド・ハムの昼食を取っていたベルメハも静かでした。 彼は二頭立て馬車が砂煙を上げて猛スピードで教会と塔の脇を通り過ぎるのを驚いて見ていました。 「英軍将校だ」 と、彼は言いました。 「目的地を間違えておる」 慎ましやかな笑い声が上がりました。それでも、将軍のスタッフの中には英軍が戦っている間に何もしないでいることに落ち着かない気分を味わっているものもおり、とくにヴィラットの部隊を海岸から撤退させたザヤス将軍は、その感情を強く味わっていました。 ザヤスは自分の歩兵部隊を南進させて戦闘に合流させることを提案し、その提案はガリアーナ大尉が汗だくの馬でホイートリー大佐の援軍要請をもたらしたことでさらに強く主張されたのでした。 ラペーニャはそっけなくその提案を退けました。 「わが同盟軍は」 と、彼は居丈高に言い放ちました。 「単にしんがりとしての戦いを進めているだけである。もし彼らが命令に従っていれば、もちろん、必要以上の戦いは行われずに済んだ。しかし現在のところ、われわれは彼らが安全に撤退してくる場所を確保しておかなければならない」 彼はガリアーナに冷たい視線を向けました。 「それに、きみはなぜここにいるのだ?」 彼は怒りを含んだ声で追求しました。 「きみは街の守備隊に任務があるのではなかったか?」 ラペーニャの追求に落ち着きをなくしたガリアーナは、彼の要求に答えが得られることを、もはや期待していませんでした。 彼は軽蔑をこめて将軍を一瞥すると、疲れた馬を松林に向けました。 「やつの父親は生意気な馬鹿者だった」 と、ラペーニャは言い捨てました。 「息子も同じだ。どこかで勉強することが必要だな。黄熱病の流行している南アメリカあたりに配属させるべきだ」 しばらく誰も何も言いませんでした。ラペーニャ付きの牧師がワインを注ぎましたが、ザヤス将軍はグラスを手でふさぎました。 「少なくとも、私に水路を渡らせていただけませんか」 と、彼はラペーニャに提案しました。 「きみが受けている命令は何だったかな、将軍」 「命令を下さるようにお願いしているのです」 と、ザヤスはさらに主張しました。 「きみへの命令は」 と、ラペーニャは言いました。 「橋の守備だ。現時点での任務を遂行するのがきみの義務である」 そんなわけでスペイン歩兵部隊はリオ・サンクティ・ペトリの近くにとどまり、そのそばを二頭立て馬車は南へ向けてスピードを上げて駆け抜けていきました。 その御者はムーン准将で、町の郵便馬車の厩から馬車を借りたのでした。 彼は馬に乗る方が好きだったのですが、折れた足が痛んで無理でした。二頭立て馬車もそれよりはわずかに快適だというだけでした。スプリングは硬く、ダッシュボードに乗せて足を支えていました。蹄が砂を蹴り上げて准将の顔にかかり、治りかけた足はやはりまだ痛みました。 彼は砂浜から松林に続く轍のあとを見てそれをたどることにし、その道の足場がましなことを願いました。 それはいくらかましで、木陰の道を順調に進んでいきました。 准将の腕には、傍らに座った婚約者がしがみついていました。 彼女はサン・アウグスティン侯爵夫人で、未亡人なのだと名乗っていました。 「弾丸が飛んでくるようなところにはきみを連れて行かないよ、マイ・ディア」 と、ムーンは言いました。 「がっかりさせるのね」 と、彼女は言いました。黒い帽子から垂れ下がった薄いベールが、彼女の顔を隠していました。 「戦場は女性向ではないんだ。特に美しい女性には向いていないことは確かだ」 彼女はほほ笑みました。 「私は戦闘を見てみたいのよ」 「そしてきみは見ることができるさ。もちろんだとも。安全地帯からね。私は足を引きずりながらきみの手をとることになるだろうな」 ムーンは松葉杖をぴしゃりと打ちました。 「しかし馬車にはいなくてはいけないよ。安全なところに」 「あなたといれば安全よ」 と、侯爵夫人は言いました。 結婚したら、と、准将は彼女に言いました。レディー・ムーンになるんだ。 「ラ・ドーニャ・ルナ(月の奥方)ね」 と、彼女は彼のひじを握り締めました。 「奥方はいつもあなたとなら安全よ」 准将は彼女の愛情表現に高笑いで答えました。 「なぜ笑うの?」 と、彼女は腹を立てたようでした。 「ヘンリー・ウェルズレイの顔を思い出していたんだ。昨夜きみを紹介した時の」 と、准将は言いました。 「満月みたいにマヌケな顔をしていたじゃないか!」 「彼は立派な人に見えたわ」 と、侯爵夫人は言いました。 「ヤキモチだよ。やつはヤキモチを焼いていたんだ!私にはわかったよ。彼が女好きだとは知らなかった。それで女房が逃げたんだな。彼はきみが好きだったということははっきりわかったよ。たぶん私は悪いことをしたんだな」 「彼はとても丁寧だったわ」 「彼は大使だからね。それは丁寧だろう。そのための男だからな」 准将は黙りがちになりました。轍のあとが松林を抜けて東に枝分かれし、カーブも急だったのです。 それでも彼は腕の良い御者並みに馬を操ることが出来ました。 戦闘の騒音は今では大きく聞こえており、遠くではなくすぐ前方でした。彼はゆっくりと手綱を引き、馬の足を遅めました。 「見ないほうがいい」 と、彼は言いました。 そこにはズボンの脱げた、股間が血まみれの男がいました。 「連れてくるべきではなかった」 と、彼は短く言いました。 「私はあなたの世界を知りたいの」 と、彼女は准将のひじにすがりながら言いました。 「この恐ろしい光景について、きみに許しを請わなければ」 と、彼は鷹揚に言い、そして手綱を再び引きました。木立の中から銃弾に裂かれた旗を掲げた英軍の隊列が現れたのです。前方わずか100ペースのところでした。馬車から兵士たちの間の地面は戦死者たちや負傷兵たち、放棄された武器や焦げた草で埋まっていました。 「距離は十分ある」 と、准将は言いました。 フランス軍は12ポンド砲の車輪を交換しており、元の位置に戻していましたが、砲兵隊の指揮官は敵兵のターゲットになっていることに気づいており、その場にとどまることが出来ませんでした。 彼は曲射砲を放棄することを強いられ、しかしただでは終わらせまいと、最後の砲弾を装填させました。彼は英軍兵に向けて発射することを命じ、そして速やかに撤収しました。導火線の火が達して砲が発射され、そして砲兵隊指揮官は砲を安全な場所に移させました。 砲弾は第67連隊の隊列で炸裂しました。伍長のはらわたを吹き飛ばし、ある兵卒の左腕をもぎとり、そしてハンプシャー部隊の後方20ペースのところに落ちました。 導火線から煙がぶすぶすと立ち上り、砲弾は松林の中を回転していきました。 ムーンはそれが向かってくるのを見て馬を右に急回転させ、ミサイルを避けました。彼は右手に手綱を握りましたがその手はすでに鞭を持っており、左腕は侯爵夫人に回して彼女をかばい、そしてそのとき砲弾が爆発しました。 破片が彼らの頭上を飛び、そのひとつは傍らの馬の腹をえぐりました。 向こう側の馬はパニックに陥り、2頭ともが走り出しました。准将と侯爵夫人はしっかりとつかまっていなければなりませんでした。彼らはくぼ地を駆け抜け、煙と死体野中に突っ込んでいくことになりました。准将は手綱を力いっぱい引っ張りましたが、外側の車輪が死体に乗り上げ、馬車の車体は傾きました。 車両は明らかに事故を起こそうとしていました。 侯爵夫人が、そして続いて准将が地面に投げ出されました。足が車軸にぶつかり、彼は鋭い叫びを上げました。 彼の松葉杖はヒースの茂みに飛んでいって見えなくなり、ムーンと、彼がドーニャ・ルナになることを望んでいる女性とは、フランス軍の隊列の取り残された曲射砲のすぐそばに取り残されてしまったのでした。 そして前方では叫び声が響いていました。 「皇帝万歳!」 家人と私が続けてインフルエンザにかかってしまい、訳がすっかり滞ってしまいました。 やっと手をつけ始めました。 1月中にここまで出来てよかったです。。。 来週からはなるべく連続して訳して終わらせますので、よろしくお願いします。
by richard_sharpe
| 2009-01-30 18:27
| Sharpe's Fury
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