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1811年3月、バルロッサの戦い。
第3部 戦闘 第10章 - 4 シャープは一番高い砂丘に登り、リオ・サンクティ・ペトリ川の方向に望遠鏡を向けました。 フランス兵たちの後姿が海岸に見えましたが、彼らの頭の辺りはマスケット銃の煙でかすんでいるようでした。望遠鏡がちゃんと固定できなかったので、像は安定しませんでした。 「パーキンス!肩を貸せ」 パーキンスは望遠鏡の台になってくれました。シャープは接眼鏡に目を当てました。 望遠鏡を固定しても、何が起きているのかよくわかりませんでした。フランス軍は3列に並び、その向こう側は火薬の粉塵で煙って隠されてしまっていました。 彼らは連射を続けていました。 フランス軍の左翼は砂丘に隠れていて隊列全体を見渡すことはできず、しかし少なくとも1000人の兵士たちがいることは見て取れました。 イーグルが2つ見え、砂丘に隠されたところにも少なくとも2大隊はいるように思われました。 「のろまですね、連中」 ハーパーが彼の後ろにやってきました。 「のろまだな」 と、シャープも言いました。 フランス軍は大隊ごとに発砲していましたが、もっとも遅い兵士に銃撃のタイミングを合わせているためでした。たぶん1分間に3発撃つのは無理かもしれない、とシャープは思いました。 しかし彼らは負傷者をほとんど連れていないようだったので、数としては十分なように見えました。 彼は望遠鏡をゆっくりと彼らの隊列に沿って動かし、たった6人の死体が将校たちがいる隊列の背後に引きずってこられているのを見ました。 スペイン軍の銃声が1度か2度聞こえましたが、姿は見えませんでした。やがて煙が薄くなってくるにつれ、スペイン軍のライトブルーのユニフォームが見えてきました。そしてその隊列はフランス軍からたっぷり300歩は離れていることがわかりました。 「もっと近づかないと」 と、シャープはつぶやきました。 「俺も見ていいですか?」 と、ハーパーが尋ねました。 シャープは、これはハーパーの戦いじゃなかったんじゃないのか、とか何とか言い返そうとしましたが、代わりにパーキンスの肩の場所を貸してやりました。 彼は振り返って、古い廃墟に飾られた小島の周りに打ち寄せる波に目を向けました。 10隻あまりの漁船が波打ち際の向こう側で、戦いを見物していました。 銃声に引き寄せられた、サン・フェルナンドからの観客たちの船もありました。 間違いなく、好奇心に駆られてカディスからの観客もすぐにやってくると思われました。 シャープはハーパーから望遠鏡を受け取りました。 彼はそれをしまおうとして、指が小さなプレートに触れました。 1803年9月23日、感謝をこめて、AW プレートにはそう記されていました。 ロンドンのマシュー・バージ製のすばらしい工芸品であるその望遠鏡は、影の薄い印象のヘンリー・ウェルズレイをシャープに思い出させました。その望遠鏡は、ウェリントン公にとってはありがたくない行為の代償としてシャープに与えられたもので、シャープが欲しいと思っていたものではありませんでした。 まあ、それはどうでもいいことでした。 1803年。 と、シャープは思いました。 なんと昔のことだろう! 彼はその日のことを思い出そうとしました。ウェリントン公、当時のサー・アーサー・ウェルズレイをシャープが救った日。 5人の敵兵を殺したと彼は思いましたが、確かではありませんでした。 スペイン軍の工兵隊は舟橋の最後の30フィートにわたって橋板を横に渡し、無許可にカディスに向かって渡るものを阻止しようとしていました。しかしザヤス将軍は今、明らかに橋を渡るこ開くことを望んでいました。そして、スペイン軍3大隊は橋を渡ろうとしているということを、シャープは確認しました。 ザヤスは明らかにフランス軍を後尾から攻撃しようと決意したのでした。 「俺たちもすぐに行くことになるぞ」 と、彼はハーパーに言いました。 「パーキンス、みんなに合流しろ」 と、ハーパーは小言を言いました。 「軍曹、望遠鏡を俺も見ていいですか?」 と、パーキンスは懇願しました。 「おとなになってからな。行け」 3大隊が橋を渡る時間は、長すぎるように感じられました。 その橋は舟橋というよりもむしろ長い艀でできており、狭く不安定でした。 シャープと部下たちがガリアーナ大尉に合流する頃には、好奇心旺盛な見物人たちがサン・フェルナンドやカディスから100人近く集まり、歩兵部隊の後から舟橋を渡ろうとしていました。 砂丘に登ったり、フランス軍に望遠鏡を向けている者たちもいました。 「橋を渡る邪魔をしようとしている」 と、ガリアーナは苛々した様子で言いました。 一般市民を渡らせたらいけないんじゃないのか?」 と、シャープは言いました。 「ところで正直なところ、向こう側であんたは何をしようとしているんだ?」 「何をする勝手」 とガリアーナは言いましたが、実際彼はなんと答えていいかわからなかったのでした。 「私が役に立つ人間だということを証明する」 と、彼は言いました。 「何もしないよりはましではないか?」 最後尾のスペイン師団が渡り終わろうとしており、ガリアーナは前に踏み出しました。 彼は短い橋の上で馬から下り、不安定な橋板を手綱を取って進もうとしましたが、突堤の道に到着する前にスペイン兵たちが間に合わせのバリケードを築きました。 1人の中尉がガリアーナに警告を発しました。 「俺の連れだ」 ガリアーナが口を開く前にシャープが言いました。 がっしりとして背の高い無精ひげの中尉は、胡散臭そうにシャープを見ました。 英語を理解していないようでしたが、引き下がろうともしませんでした。 「彼は俺の連れだといったはずだ」 と、シャープは言いました。 ガリアーナはシャープを手で制して、スペイン語で早口に何か言い、 「命令書を持っているか?」 と、シャープを見ながら英語に切り替えました。 シャープは命令書を持っていませんでした。 ガリアーナは、シャープがサー・トーマス・グレアム中将に向けたメッセージを伝えに行くところだと説明しました。もちろん命令は英語だが、中尉は話せるのか? ガリアーナは自分のことを、シャープの連絡将校だと説明しました。 本当なら今頃は、シャープは5人のライフルマンたちのために、サン・フェルナンドの酒保でビーフとパンとラム酒の配給量を手に入れているはずでした。 彼はその許可証を、気色ばんだライフルマンたちとなだめようとしているガリアーナを怒鳴りつけようとしている中尉に突きつけました。 彼は横木を脇にどけるように命じました。 「きみに頼りっぱなしだったな」 と、ガリアーナは言いました。 彼は手綱を引き寄せ、雌馬の首をなでてゆれる舟橋を怖がらないようになだめていました。 シャープがグアディアナで破壊したものほど頑丈ではない出来の舟橋は振動し、潮の流れにぐらぐらしていました。 そして何とか対岸に渡ると、ガリアーナは再び馬に乗り、舟橋を守備するために作られた臨時の砦のある砂丘を過ぎ、シャープを南に先導しました。 ザヤス将軍は3大隊を海岸に1列に並べ、ゆっくりと前進させていました。 右手から打ち寄せる波が、彼らのブーツを洗っていました。 兵士たちが脱ぎ捨てないように、軍曹たちが叫んでいました。 スペイン軍の制服は青空に対抗するような明るいブルーでした。 遠くから、マスケットの銃声よりも重々しい大砲の音が空気を切り裂いて聞こえてきていました。 それはやがて静かになり、散発的な銃声が近づいてきて、シャープは他の銃声も聞いたように思いましたが、それはまだ遠くでした。 「もう帰れるぞ」 と、彼はハーパーに言いました。 「この連中が最初に何を始めるのか見ましょう」 とハーパーは言って、スペイン軍のほうにうなずきました。 連中 はただそこにいただけでした。 ヴィラット将軍は自軍が後方から攻撃されると見て取ると、アルマンザ・クリークを東に渡って後退しました。負傷者も運ばれました。 スペイン軍は彼らが去るのを見ると歓声を上げ、そして退却するフランス軍から略奪をしようと砂丘を駆け上がりました。彼らはほとんど2倍の数で敵を圧倒していました。 ガリアーナは鐙に立ち上がり、得意げでした。 南北双方から合流したスペイン軍は、確かにこのときはフランス軍を水路の向こうに追い立て、チクラーナに向かう未知の上に遠ざけることが出来ましたが、今度はアルマンザの向こう岸から砲撃が始まりました。 12ポンド砲の砲兵部隊がしっかりと固定した砲から東に向けて一斉射撃し、砲弾は地面に当たって爆発し、爆風で砂が巻き上がりました。 スペイン兵たちは砂丘の後ろに身を隠し、その隠れ場所に向かってスライスするように第2弾が砲撃されました。 フランス歩兵部隊の後列は水路を渡り、上げ潮をはさんで新たにスペイン軍に面したラインを作っていました。 砲撃はやみ、煙が水面を漂っていました。 フランス軍は、じっくり待つことにしたようでした。 連合軍の退却を阻もうとした彼らの兵力は押しのけられましたが、それでも大砲は橋に向かってくる軍勢に砲弾を浴びせることが出来ました。 彼らは第2の砲兵部隊を増援し、海岸から敵軍を退却させて満足しているスペイン軍が砂丘に隠れているうちに、南からの退却が始まるのを待ちました。 アルマンザに徹底的に追撃しなかったことに失望したガリアーナは、スペイン将校たちの一群に馬を向け、そしてシャープのところに戻ってきました。 「グレアム将軍は南にいる」 と、彼は言いました。 「ここに後衛部隊をつれてくるという命令を受けているそうだ」 2,3マイル先の丘から、マスケットの煙が漂ってくるのがシャープには見えました。 「まだ着いていないようだ」 と、彼は言いました。 「それなら俺が会いに行こう。帰っていいぞ、パット」 ハーパーは、ちょっと考え込みました。 「それであなたは何をするんです?」 「俺はただ海岸を散歩するだけだ」 ハーパーは他のライフルマンたちを見渡しました。 「誰か俺とミスター・シャープと一緒に海岸を散歩したいものはいるか?それとも戻ってあのむさくるしい中尉に通してくれるように頼むか?」 南からもう一発の砲声がとどろいてくるまで、ライフルマンたちは何も言いませんでした。そして、ハリスが顔をしかめました。 「あっちで何が起きているんです?」 と、彼は尋ねました。 「俺たちには関係のないことさ」 と、シャープは言いました。 ハリスは兵営つきの弁護士になることもあり、自分たちには関係のないその戦いについて何か言いたげでしたが、ハーパーと目があってしまって彼は何も言わないことにしました。 「俺たちはただ、海岸で散歩するだけだ」 と、ハーパーは言いました。 「それに散歩にはいい日だぞ」 彼はシャープが怪訝な目つきで見ているのを見返しました。 「俺はフォーの連中のことを考えていたんです。みんなあっちにいますからね。ダブリンから来た気の毒なやつらですよ。連中はホンモノのアイルランド人ってやつを見たいんじゃないかと、俺は思うんです」 「でも戦いに行くわけじゃないですよね?」 と、ハリスはこだわりました。 「お前、自分を何だと思っているんだ、ハリス?兵隊じゃないか?」 と、ハーパーは手厳しく言いました。彼はシャープの視線を気にしていませんでした。 「もちろん、俺たちは闘いにいくわけじゃない。ミスター・シャープのおっしゃったことを聞いただろう。海岸を散歩するんだ。俺たちのすることはそれだけだ」 そういうわけで、彼らはそうしました。 海岸の散歩に、彼らは出かけていきました。
by richard_sharpe
| 2008-11-12 17:58
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