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1811年3月、バルロッサの戦い。
第3部 戦闘 第10章 - 1 「こいつは俺たちの闘いじゃありませんよ」 「わかってるさ」 シャープが認めたことは、そんなにすぐに同意が得られるとは思っていなかったアイルランドの大男を驚かせました。 「俺たちはリスボンにいるはずなんですから」 「ああ、そのはずだった。それに、そのうち行くことになるだろう。だが今はリスボンに向かう船はないし、しばらくはないんだ。こいつが終わるまではな」 シャープはサンクティ・ペトリ川の向こう岸に向かってうなずきました。 yogaaketekara1時間ほどたっていて、川の向こう側を1マイルばかり進んだあたりには、ブルーのユニフォームの兵士たちがいました。スペインのライトブルーのユニフォームではなく、濃い色のフランス軍のものでした。敵はすでに内陸の荒野からやってきていて、その突然の登場に、ザヤス将軍揮下の歩兵部隊は戦闘態勢をとり、川の北側で待ち構えていました。 おかしなことに、フランス軍は対岸の船橋をかけているところを攻撃しようとはせず、南側の、砦から離れたところに向かっていました。 砦の大砲はフランス軍を狙いましたが、砲弾は手前の砂の上に落ち、弾薬の無駄だと悟らせました。 「つまりですね」 と、ハーパーは続けました。 「ただミスター・ガリアーナが闘いたがっているだけで・・・」 「わかっているさ、お前の言いたいことは」 シャープは荒っぽくさえぎりました。 「じゃあ俺たちはいったい全体なんでここにいるんです?」 シャープはハーパーのバカみたいな勇敢さに疑いを持ってはいませんでした。このアイルランドの大男は、臆病さから抗議しているわけではなく、不平を言っているのでした。 フランス軍は川を背にしていて連合軍は南側の遠くにあり、そこにラペーニャ将軍の部隊がいるわけで、内陸からは遠くはなれ、フランス軍は海岸線に沿って攻撃をかける代わりに東から攻撃をかけていました。 つまり現在は軍はフランス歩兵の4個か5個師団に向き合っているように、シャープには思われました。 そして、それはラペーニャの戦いでした。 老婦人の揮下といえども1万5千の兵が、海岸でより少ない敵に打ち破られるはずはなく、ですからシャープと5人のライフルマンたちにはやることはないはずでした。 さらに、シャープが5人のライフルマンたちの命を危険にさらすということは無責任なことでもありました。つまりそれがハーパーの言っていることで、シャープも同意しました。 「俺たちがここで何をしようとしているのか話しておこう」 と、シャープは言いました。 「俺はガリアーナ大尉に借りがある。だからここにいる。われわれみんな、彼に借りがある。もしあの時ガリアーナがいなければ、われわれはみんなカディスの刑務所行きだった。だからわれわれはお返しに、彼に川を渡らせる。そしてそれが終われば、全部終わりだ」 「川を渡る?それだけですか? 「それだけだ。邪魔するスペイン野郎に彼を渡らせるように言ってやる。それで終わりだ」 「なぜ渡り終わるまで見ていなくちゃならないんです?」 「彼が頼んだからだ。もし俺たちがいなければ、邪魔をされると彼は思っているからだ。それが彼がわれわれに望んだ好意だからだ」 ハーパーは胡散臭そうな顔をしました。 「それでもし彼が渡り終わるのを見終わったら、俺たちは町に帰れるんですね?」 「酒場が恋しいか?」 と、シャープは尋ねました。 彼の部下たちは海岸の端に露営して今日で二日でした。ガリアーナが用意したスペイン軍の糧食に2日間不平を言い、サン・フェルナンドの快適さを2日間恋しがっていました。 シャープは同情はしましたが、彼らを快適でない場所に置くことを、ひそかに喜んでいました。 暇な兵士たちというのは問題を起こし、酔っ払い、それなら不平を言わせているほうがましでした。 「だから彼が無事に渡るのを見届けたら」 と、シャープは言いました。 「お前と連中は戻っていい。俺が命令書を書いてやる。ヴィーノ・チントのワインボトルを俺のために1本用意して、待っていてくれ」 ハーパーは望みどおりの答えを得たのに、困ったような顔をしました。 「あなたを待つんですか?」 と、彼はぶっきらぼうに尋ねました。 「長くはかからん。夜までには終わるだろう。だから行って、連中にガリアーナ大尉が橋を渡ったらすぐに帰れると伝えてやれ」 ハーパーは動きませんでした。 「それであなたは何をするつもりなんですか?」 「公式には」 と、シャープはハーパーの質問を無視して続けました。 「われわれは全員ムーン准将の次の命令が下るまでとどまることを命じられている。しかし彼はお前たちが戻っても気にしないと俺は思う。やつにはわからないだろう?」 「でもなぜあなたは残るんですか?」 と、ハーパーはこだわりました。 シャープは帽子の下からのぞいている包帯の端に触りました。 頭の痛みは治まっていて、包帯をとってもいいのではないかという気がしてはいましたが、まだ頭蓋骨が気になって、おまじないのように毎日包帯を酢で湿らせていました。 「礼の第8連隊なんだ、パット」 と、彼は言いました。 「それが理由だ」 ハーパーはフランス軍が駐留している海岸線を見下ろしました。 「やつらはあそこに?」 「あいつがあそこにいるかどうかはわからん。俺にわかっているのはやつらは北に送られ、しかし俺たちが橋を爆破したから北にはいけなかったということだ。だからここに戻ってきたという見込みがあるわけだ。青してもしやつらがここにいるとすれば、パッと、俺はヴァンダール大佐に挨拶をしてやらないとな。こいつで」 彼はライフルをたたきました。 「それであなたは・・・」 「それで俺は海岸をぶらぶら行くつもりなんだ」 と、シャープはさえぎりました。 「俺はやつを捜しに行く。見つけたら撃つ。それだけだ。それ以上じゃないんだ、パット。それだけなんだ。俺たちの闘いじゃないからな。違うか?」 「俺たちの闘いじゃありません」 「だから俺がやるのはそれだけだ。やつが見つからなかったら、俺は戻ってくる。ワインを1本用意しておいてくれればいい」 シャープはハーパーの肩をたたきました。そして馬上のガリアーナ大尉のところへ歩いていきました。 「大尉、何かあったか?」 ガリアーナは小型の望遠鏡で南を見ていました。 「わからないことがある」 と、彼は言いました。 「何がわからない?」 「フランス軍の向こうにスペイン軍がいるんだ」 「ラペーニャ将軍の部隊だろう?」 「なぜあそこにいる?」 と、ガリアーナは尋ねました。 「彼らはチクラーナに向かっているはずなんだ!」 シャープは川を見、そして海岸を見下ろしました。フランス軍は3列に並んでいて、将校は馬上にあり、イーグルは朝日に輝き、そしていきなり、空を背景に浮き上がっていたイーグルが煙で隠されました。 シャープはマスケット銃の分厚い煙が湧き上がり、一瞬の静寂のあと銃声が彼を包みました。 そして最初の銃撃の後、世界は静寂を取り戻し、ただかもめの声と波音が聞こえているだけでした。 「なぜ彼らはここに?」 ガリアーナは再び尋ね、そして2度目の銃撃がありました。今度は1回目よりも激しく、朝の景色は戦いの音に満たされたのでした。
by richard_sharpe
| 2008-10-22 18:02
| Sharpe's Fury
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