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1811年3月、バルロッサの戦い。
第3部 戦闘 第9章 - 3 カディスが生き延びるか陥落するか、その決定をかけた戦いが予想される、その晩のことでした。 パンフリー伯がサン・フェルナンドのシャープが借りた家にやってきたときに、ある裏切り行為の一幕は終わりました。 彼は暗くなってから、大聖堂の礼拝室に持っていったのと同じ鞄を持ってやってきました。シャープには、閣下はモンセニー神父が暗闇で待つ祭室に向かう階段を下りていったときよりも緊張しているように見えました。 パンフリーは部屋の中を見回し、暖炉のそばにシャープが座っているのに気づき、目を見開きました。 「きみがここにいるだろうと思っていたよ」 と、彼は言いました。そしてカテリーナのほうに何とか微笑して見せ、さらに部屋を見渡しました。 そこは狭く、ただ黒いテーブルと背の高い椅子があるだけでした。壁は白く塗られ、司祭の肖像画と古い十字架がかかっていました。 炉の火と、天井から下がった小さなランタンだけが部屋を照らしていました。 「ここはきみには居心地はよくないだろう、カテリーナ」 と、パンフリー伯は気楽な調子で言いました。 「私が育った家に比べれば天国よ」 「もちろん、そうだろう」 と、パンフリー伯は言いました。 「きみが駐屯基地で育ったことを忘れていた」 彼は心配そうな視線をシャープに向けました。 「彼女は豚の去勢ができるそうだよ、シャープ」 「彼女が人間にも何ができるのか、知っておいたほうがいいぜ」 と、シャープは言いました。 「しかしきみは街に戻ったほうが気分よく暮らせるのではないかな」 パンフリーはシャープのきつい言葉を無視してカテリーナに話しかけました。 「もうモンセニー神父を怖がることはない」 「そうなの?」 「彼は大聖堂の梁が落ちたときに負傷したのだ。もう二度と歩けるようにはならないだろうと聞いている」 パンフリーはシャープに再び目を戻し、反応を待ちました。しかし何の反応もなかったのでカテリーナに笑いかけ、テーブルにバッグを置くと袖口からハンカチを取り出し、椅子のほこりを払って腰掛けました。 「だからきみが街を出る理由はもうなくなったのだよ。カディスは安全だ」 「ここに私がいる理由って何かしら」 と、カテリーナは尋ねました。 パンフリーはシャープをしばらく見つめました。 「理由というのはきみの個人的な事柄だ。ともかくカディスに戻りなさい」 「あんたはヘンリーの女衒か?」 と、シャープは軽蔑したように尋ねました。 「大使閣下は」 と、パンフリーは威厳をつくろいました。 「セニョリータ・ブラズケズがいなくなったことについて、気を取り直そうとしておられる。彼の人生での不運な一幕は今終わろうとしていると、私は考えている。忘れることができることだ。そうではなく、私自身、彼女とご一緒するのが嬉しいので戻ってほしいと考えているのだ。私たちは友達だ。そうじゃないか?」 と、彼はカテリーナに訴えました。 「私たちは友達よ、パンプス」 と、彼女は優しく言いました。 「では友達として言うが、きみの手紙の価値はもうなくなった」 と、彼は彼女に笑いかけました。 「モンセニーが動けなくなった途端に価値を失ったのだ。私は今朝、その不幸な出来事について知った。他の誰も、それは私が保証するが、手紙を出版しようとはしないだろう」 「じゃあどうしてあんたは金を持ってきたんですかね、閣下?」 と、シャープは尋ねました。 「金を集めたのがモンセニー神父の悲報を聞く前だったのでね。大使閣下は手紙を取り戻すためならそれくらいのはした金は払うというおつもりなのだ」 「はした金」 と、シャープは単調に繰り返しました。 「望外のご配慮だ」 と、パンフリー伯は言いました。 「どれくらいはした金なんだ?」 と、シャープは尋ねました。 「100ギニーほどかな?」 と、パンフリーは提示しました。 「非常に寛大なお心遣いだ」 シャープは立ち上がり、パンフリー伯の手がコートのポケットに動きました。シャープは笑い出しました。 「ピストルか!あんたは本気で俺と闘えると思っているのか?」 パンフリー伯の手は、まだゆっくりと動いていました。シャープは彼の後ろに立ちました。 「大使閣下はこの手紙の件はこれっぽっちもご存じない。そうだろう、閣下。あんたは話していないからな。自分のためにほしいんだ」 「馬鹿なことを言うんじゃない、シャープ」 「価値があるからな。そうじゃないか?ウェルズリー家のちょっとした弱みを握ることになるんじゃないか?ヘンリーのいちばん上の兄貴は何だった?」 「モーニントン侯爵は」 と、パンフリーは固い声で言いました。 「外務大臣だ」 「もちろんそうだ」 と、シャープは言いました。 「あんたとしては、恩を着せるのにいい道具になる。だからこの手紙がほしいんじゃないのか、閣下。それか大使閣下に売りつけようとしているとか?」 「想像力が豊かだな、シャープ大尉」 「いいや。俺の側にはカテリーナがいて、カテリーナは手紙を持っていて、あんたは金を持っている。金はあんたにとっては簡単なことだろう、閣下。なんていったっけ?ゲリラへの助成金?議会への賄賂?だがどちらにしろ、今はカテリーナのための金だ。政治家たちのポケットをいっぱいにするよりはましだってことだな。それともうひとつあるんだが、閣下」 「なんだね?」 と、パンフリー伯は尋ねました。 シャープはパンフリーの肩に手を置きました。伯は身震いしました。 シャープはかがみこむと閣下の耳に乱暴にささやきました。 「彼女に金を渡さなければ、俺はあんたがアストリッドにやらせたのと同じことをあんたにしてやる」 「シャープ!」 「喉を掻き切る」 と、シャープは言いました。 「豚を去勢するよりも難しいが、正当な行為だ」 彼は剣を数インチ、鞘をこすりながら引き出しました。 パンフリー伯の肩が震えるのがわかりました。 「アストリッドのためなら、俺はやるべきなんだ。しかしカテリーナが嫌がるんでね。だから、あんたはカテリーナに金を払うだろう?」 パンフリーは身動きしませんでした。 「きみは私の喉を掻き切るようなまねはしないよ」 と、驚くほど落ち着いた声で彼は言いました。 「そうか?」 「みんな私がここにいることを知っているんだ、シャープ。二人の憲兵に君がどこに寝泊りしているか尋ねた。彼らが私のことを思い出さないと思うか?」 「リスクは承知さ、閣下」 「そこがきみの有能なところだよ、シャープ。だがきみはバカじゃない。国王陛下の外交官の1人を殺せば、きみも死ぬことになる。それに、きみも言うように、カテリーナは私を殺させないだろう」 カテリーナは何もいいませんでした。その代わりに彼女はわずかに頭を振り、しかしそれがパンフリー伯が確信して主張しているような殺害の否認だったのか、彼を殺してほしくないというサインだったのか、シャープにはわかりませんでした。 「カテリーナは金をほしがっている」 と、シャープは言いました。 「動機は私も完全に理解している」 パンフリーは言って鞄をテーブルの真ん中に押しやりました。 「手紙を持っているかね?」 カテリーナはシャープに6通の手紙を渡すと、シャープは伯にそれを見せ、そして暖炉に向かいました。 「やめろ!」 と、パンフリーは言いました。 「やるさ」 とシャープは言って、燃え盛る薪の上に手紙を投げ込みました。 手紙は炎を上げ、急に明るくなり、部屋を光で満たし、パンフリー伯の青ざめた顔を照らし出しました。 「なぜアストリッドを殺した?」 と、シャープは尋ねました。 「英国の機密を保持するためだ」 と、パンフリー伯は荒々しく答えました。 「それが私の仕事だ」 彼は不意に立ち上がり、華奢に見える姿が威厳を帯びました。 「きみと私はよく似ているよ、シャープ大尉。われわれは戦時において、生きることにおいて、たった一つのルールを知っている。勝つために、ということだ。アストリッドには気の毒なことをしたと思っている」 「いや。思っていない」 と、シャープは言いました。 パンフリーは一呼吸しました。 「その通りだ。思っていない」 彼は突然ほほ笑みました。 「いいゲームをしたな、シャープ大尉。おめでとう」 彼はキスをカテリーナに投げ、そのまま何も言わずに立ち去りました。 「私はパンプスが好きよ」 伯が立ち去ってから、カテリーナは言いました。 「だからあなたが彼を殺さないでくれて嬉しいわ」 「殺すべきだった」 「だめよ」 と、彼女は強く言いました。 「彼もあなたと同じ。悪漢よ。悪漢はお互いに忠実であるべきよ」 彼女は金貨をいくつかの山に積み上げ、それをもてあそんでいました。ランプの光が金貨に反射して、彼女の肌を黄色く照らしていました。 「それでカディスに戻るのか?」 と、シャープは尋ねました。彼女はうなずきました。 「たぶんね」 といって、彼女は金貨を回しました。 「男を見つけに?」 「金持ちの男よ」 と彼女は言って、回るコインを見つめていました。 「私にほかに何ができるというの?でも男を見つける前に、私は戦争を見てみたいわ」 「だめだ!」 と、シャープは言いました。 「女が行くような場所じゃない」 「そうでしょうね」 彼女は肩をすくめ、そして微笑しました。 「それでいくらほしいの、リチャード?」 「あんたがくれたいと思うだけ」 彼女は大きな一山を、テーブルの上で押しやりました。 「あなたはバカね、シャープ大尉」 「たぶんそうだな」 南のほうのどこかへ、二つの軍隊が進んでいました。シャープは、そこに合流できるかもしれないと考えていました。 金はそこでは都合のよくないシロモノになることでしょう。それでも、女についての記憶はいつでも彼にとって気分のいいものでした。 「金を2階に持っていこう」 と、シャープはほのめかしました。 そして、二人はそうしました。
by richard_sharpe
| 2008-10-07 15:30
| Sharpe's Fury
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